七田(しちだ)式などで知れる右脳教育。どちらかというと、赤ちゃん〜小学校入学前の幼児さんが対象というイメージを持たれている方も多いと思います。
実際、右脳が優位に働くのは3歳位までで、それ以降は徐々に左脳に移行していき、7歳以降は左脳優位となります。
ではやはり「小学生の右脳トレーニングは意味がない」のでしょうか?
今回の記事では、「小学生が右脳トレーニングをする意味」と「学校のお勉強に活かす右脳トレーニング法」についてお伝えします。
そもそも「右脳」の力とは。
まず、そもそも「右脳トレーニング」で鍛えられる右脳の力とはどのようなものなのか?についてあらためて確認してみたいと思います。
同じ脳でも、右脳と左脳ではそれぞれの働きが異なります。
左脳は、言葉を介して思考する「言語脳」。
少しずつ理解しながら学習していくのが得意で、分析力や論理性に優れています。
それに対して右脳は、直感的な「イメージ脳」。
イメージ(映像)を媒介として、高速で大量の情報をあるがままに受け入れるのが特徴で、記憶力やひらめき力、豊かな創造性を発揮します。
そして先程も述べたように、0歳から3歳までは「右脳優位の時代」と言われています。
右脳は大量で高速の情報に反応しますので、この時期はフラッシュカードなどによる右脳への入力(インプット)を中心に、脳の回路をしっかりとつくっていくことが大事になります。
3歳から6歳までの時期は「右脳から左脳への移行期」です。
右脳へ入力(インプット)したことを出力(アウトプット)することで、右脳と左脳をつなぐ回路をつくり、能力の定着を図ります。
※アウトプットとは、言う・描く・描く・行う などのことを言います。
そして7歳以降は「左脳優位の時代」で、意識しなければ右脳は使われなくなっていきます。
小学生が右脳トレーニングをする意味と目的は?
小学校入学以降の7歳からは「左脳優位の時代」で、意識しなければ右脳は使われなくなっていきますが、使わなければ自然と閉じられてしまう右脳の能力をキープし、さらに引き出すためには、むしろ意識的に右脳を使うことが必要になります。
また、小さい頃の右脳トレーニングは右脳へのインプットが中心となりますが、小学生以降はインプットと並行してアウトプットを積極的に行い、右脳の能力を実際に勉強に役立つ、より実用的な能力へ導いていくことが目的となります。
私が七田チャイルドアカデミーの講師時代に小学生クラスで行っていたレッスンでは、以下の3つを柱に右脳トレーニングを行っていました。
・一度にたくさんの情報量を取り入れられるようにする
・目で見ながら・耳で聞きながら手を動かし正しく・素早く処理する
・右脳の記憶力をさらに高める
・記憶した内容を書き出しアウトプットすることで知識として定着させる
・右脳のイメージ力や記憶力を使って、学校のお勉強に必要な知識をインプットする
小学生向けの右脳トレーニングの内容をご紹介します。
以前私が七田チャイルドアカデミーの小学生コースで行っていた、小学生向けの右脳トレーニングの内容をご紹介していきたいと思います。
なお、こちらの記事ではあくまでも、私が過去に七田チャイルドアカデミーの講師をしていた当時のものを参考にご紹介していますので、あしからずご了承ください。
また現在、七田チャイルドアカデミーはなくなり、「七田式教室」と「EQWELチャイルドアカデミー」に変わっています。
ご紹介する内容は過去に行われていたものですが、小学生のお子さんがご家庭で右脳トレーニングをする際のご参考になる部分があれば、と思っています。
処理能力アップのための取組
・一度にたくさんの情報量を取り入れられるようにする
・目で見ながら・耳で聞きながら手を動かし処理できるようにする
迷路、数字置き換え、数字・文字追跡、欠所補充
レッスン冒頭に1~2分という短い制限時間で集中して取り組むことで、気分をお勉強モードに切り替え、グッと集中力を高めることが目的の取組です。
「数字置き換え」は、きまりに従って、マークを数字に置き換える取組。
「数字・文字追跡」は、数字を1から順番に(文字なら「あ」から順番に)見つける取組。
「欠所補完」は、見本の図形と同じになるように、足りない線を書き足す取組。
それぞれの取組は、素早く視線を上下左右に動かして見たり、少し引きの視点で全体を俯瞰して視るなど、一度にたくさんの視覚から情報を取り入れるトレーニングにもなっています。
これを毎レッスン繰り返すことで集中力や処理能力を高めていきます。
なお、この取組と似た教材が、七田のプリント教材『右脳を鍛える ひらめきドリル』。
家庭学習の冒頭や、勉強中のインターバルにこのプリントを取り入れることで、集中して勉強に取り組むことができるようになったり、情報処理能力が高まる効果があります。
☆七田式(しちだ)プリント教材☆右脳をきたえる!ひらめきドリル☆★
※『右脳を鍛える!ひらめきドリル』について、こちらの記事で詳しくご紹介しています>>>
私の教室の小学生クラスでは、レッスン冒頭に、一気に集中力を高めアタマをレッスンモードに切り替えるための取組を行っています…
記憶力アップのための取組
・右脳の記憶力をさらに高める
・記憶した内容を文字で書き出しアウトプットすることで知識として定着させる
学校でのお勉強を含め、私たちが普段使っているのは言葉を介する左脳記憶です。
左脳記憶は脳の表層部に記憶され、脳の深い場所にまで刻まれることが無いため、すぐに忘れてしまいます。
また記憶の容量も限られ処理スピードも遅いため、記憶するためには脳に相当のストレスがかかります。
一方右脳記憶とは、一度見聞きしたものを写真や映像のようにイメージで瞬時に覚えます。
無条件にありのままを高速で記憶しますので、ストレスを感じる事もなく容量も無制限。
また一度記憶したら忘れません。
トレーニングを重ねることで記憶の容量は増えていきます。
記憶をする際にもっとも重要な器官は目と耳。
目(視覚)からの記憶、耳(聴覚)からの記憶を、それぞれ単体で、または統合して使いトレーニングしていきます。
書き出しトレーニング
目で見たものを記憶し、再現する取組。
『写真記憶』と言われ、見たものを写真を撮るように映像(イメージ)として捉え、そのままを瞬時に記憶します。
記憶するお手本の種類は、絵や記号、文字(文章)などさまざまです。
※記憶するお手本の例:
・絵・・・お手本に書かれた動物や乗り物などの絵を覚えて書き出す。
・印つけ・・・マス目に書かれた色々な種類のマークを、位置と形を覚えて書き出す。
・点図形・・・点同士を結んで書かれた絵を覚えて再現する。
・文章・・・1分間自分で黙読したお話を、そのまま覚えて書き出す。
なお、【処理能力アップ】の所でご紹介した『右脳をきたえる!ひらめきドリル』にも、お手本の絵や点図形を見て記憶し書き出す『写真記憶』のトレーニングが入っています。
☆七田式(しちだ)プリント教材☆右脳をきたえる!ひらめきドリル☆★
カードフラッシュ記憶
フラッシュされる絵カードを見ながら、”リンク法記憶”の手法でお話を作って順番に記憶するトレーニング。
“リンク法記憶“とは、たとえば「かさ」「ゾウ」「バケツ」「遊園地」「りんご」の5つの言葉を、「かさをさしたゾウが頭にバケツをのせて遊園地へ行き、りんごを食べました。」などと自由にお話を作り、そのお話を頭の中でイメージすることで順番通りに記憶する方法。
つまり、おぼえたいものを、隣どうし鎖でどんどんつなげていく(リンクさせる)ことで最初から最後まで順番に記憶する手法です。
幼児さんの場合は絵カード等を使い、おぼえたい全てのカードを並べて置いた状態でお話を作りますが、カードフラッシュ記憶の場合、絵カードは次々とフラッシュされていくので、その場でどんどんお話を作ってつなげていかなくてはなりません。
かなりの思考の”瞬発力”が求められることになります。
なお、リンク法記憶トレーニング用の教材には、こちらのような絵のチップ(小さいカード)が使いやすいですが・・・
☆七田式(しちだ)記憶トレーニング教材☆メモリーチップ1・2・3☆★
チップだと小さくてフラッシュできないので、カードフラッシュ記憶のトレーニングには使いにくいです。
フラッシュカードとして使っていたのものがあれば、それを併用すればOKです。
☆七田式(しちだ)フラッシュカード教材☆かな絵ちゃんカードB(日本語版)☆★
※リンク法記憶のトレーニング方法については、こちらの記事でご紹介しています。>>>
暗唱
暗唱とは、文章を記憶して何も見ないでそらんじること。
耳で聞いた文章を、意味の理解を求めずそのままおぼえる右脳の記憶です。
「意味はわからなくとも聞いた音をそのまま記憶し、そのまま言う」ことで記憶力を高めます。
小学生では漢詩・漢文や古典文学の暗唱課題に取り組んでいましたが、おぼえる内容に意味があるのではなく、記憶力を高めること、すなわち、おぼえることそのものに意味があるのです。
意味の理解を求めてしまうと記憶の質が変わってきてしまいます。
※暗唱の取組に関してよくいただくご質問についての記事はこちら>>>
暗唱とは、文章を記憶して何も見ないでそらんじること。 暗唱に取り組んでいくうちに、最初はなかなか憶えられなかった子も、だ…
なおレッスンで取り組んでいた暗唱課題は七田の教材として販売されていますので、おうちでも取り組むことができます。
こちらの『暗唱文集 漢詩・漢文編』にはテキストブックの他にCDが付いており、テキストに載っている漢詩・漢文が2倍速➡4倍速➡3倍速というスピードで収録されています。
高速のスピードに右脳が反応するため、暗唱したい内容がインプットされやすくなります。
また2倍速➡4倍速の後に3倍速で聴くと、実際には普通の速さよりもかなり速いにもかかわらずゆっくりに感じられる、いわゆる「インターチェンジ効果」(高速道路で走行した後に一般道路に出ると、速いスピードに脳が慣れてしまっているため実際のスピードよりも遅く感じられる現象)もあります。
すなわち、それだけ脳の処理速度が上がるということになります。
円周率1000桁記憶
上でご紹介した『リンク法』と、『ペグ法』という別の記憶法を組み合わせて円周率を1000桁まで記憶する!!という取組があります。
※”ペグ法”とは、ペグ(=杭)のように何かにひっかけて、それを手がかりに記憶する方法のこと。
「01=ワイシャツ」「02=鬼」「15=イチゴ」など、1から100までの数字を物とセットで覚え、「150201」なら、「イチゴをほおばっている鬼がワイシャツを着た」等とお話でつなげて覚えます。
円周率の小数点以下20桁(3.14159265358979323846)を、
・・・というようにお話でつなげて、このお話を頭にイメージすることで1000桁までを記憶していきます。
「円周率1000桁をおぼえて何か意味があるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この取組の目的は円周率を覚えることではなく、覚える過程を通じて記憶の手法そのものを身に付けること、また大量の情報を記憶することで記憶の容量を大きくすることです。
なお、円周率記憶トレーニングの教材が『Imagery(イマージェリー)』です。
聴覚記憶トレーニング
単語や数字を耳で聞き、記憶するトレーニングです。
・単語記憶
順番に読み上げられる単語(10〜30語程度)を聞きながら、頭の中で瞬時にお話を作ってつなげ、イメージして記憶する取組。
複数の言葉を、お話でつなげて記憶する『リンク法』を使いますが、絵カードなどを見ながらお話を作るのと違い、読み上げられた単語を耳で聞きながら頭の中で瞬時にでお話を作るので、イメージ力や、その場ですぐお話を作っていく瞬発力が鍛えられます。
・数字記憶
順番に読み上げられる数字(10桁〜30桁程度)を聞きながら、2桁ずつをペグに置き換えて、瞬時にお話を作って記憶する取組。
例えば10桁の数字を記憶する場合、
2315944626
↓
23(兄さん)、15(イチゴ)、94(くし)、46(城)、26(風呂)
↓
兄さんがイチゴをくしに刺して食べながら城に帰ってお風呂に入った
などとお話を作り、頭にイメージします。
こちらの取組は単語の記憶よりも、「数字を2桁ずつに区切る→ペグに置き換える→そのものを頭に思い浮かべる→つなげてお話を作る」というプロセスが必要になりますので、かなり難易度が上がります。
知識のインプットのための取組
・右脳のイメージ力や記憶力を使って、学校のお勉強に必要な知識をインプットする
学校のお勉強に必要となる知識(理科・社会・算数など)を映像や歌でインプットすることにより、右脳のイメージ力に働きかけ知識として定着させます。
<レッスンで行っていた例>
・都道府県
各都道府県の輪郭を見ただけで【都道府県名】【県庁所在地】が瞬時に思い浮かぶよう、歌と映像でインプット。
・農作物の特徴、収穫高
日本の代表的な「旬」の農作物の特徴(色・形・手触り・匂い・味)を、五感を使って自ら発見し、文章にまとめる。
・歴史人物
日本の歴史人物の絵を見て、どんな人かを想像して文を書く。(想像なので、どんな内容でもよい。)
その後、その人物に関する紙芝居を見て、どんな人なのか・何をした人なのかをキーワードで記憶。
例:聖徳太子といえば、「飛鳥時代」「十七条憲法」「冠位十二階」のように。
このように、学校のお勉強で必要となる知識を自然にインプットできると人気の教材が「理科ソング」「社会科ソング」。
理科・社会の5つの分野「生物」「地学」「物理・科学」「世界地理」「日本地理」の知識を歌にして、聞き流すだけで自然にインプットできる教材です。
また、それぞれのCDに対応したプリントも販売されています。
CDを聞いてインプット→プリントでアウトプットの流れで知識を定着させることができます。
七田式教材 社会科&理科ソング5科目セット(日本地理・世界地理・生物・地学・物理化学)
七田式(しちだ)教材 社会・理科ソングプリント 5科目セット(日本地理編+世界地理編+生物編+地学編+物理・化学編)
最後に
すべての学習の土台となる記憶力や処理能力、集中力を高める右脳トレーニングは、小学生から始めても遅すぎるということはありません。
低学年のうちはまだ塾通いは考えていないけれど、高学年から塾に通い始めた時により良いパフォーマンスを発揮できるように学習の土台作りをしておきたい、という方は、右脳トレーニングを家庭学習に取り入れてみてはいかがでしょうか。