「数学・算数検定」と「算数・数学思考力検定」の違いって何?どっちを受検すべき?

小学生でも受検できる検定として「算数検定(数検)」や「算数・数学思考力検定」という名前を耳にしたことがある方は多いと思います。

この2つの検定、どちらも算数に関連する検定で名前も似ているので、「違いが今ひとつよくわからない・・・」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実はこの2つの検定は、同じ算数の検定であっても内容や目的はまったく違います。

今回の記事では、「算数検定(数検)」と「算数・数学思考力検定」それぞれの違いを踏まえて、

・どちらを受検すべきななのか?

・それぞれどんな人にオススメなのか?

についてお伝えします。

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「数学検定・算数検定」と「算数・数学思考力検定」の基本データ

まずは「実用数学技能検定(数学検定・算数検定)」と「算数・数学思考力検定」の基本的なところをご紹介します。

なお、最新の情報については各検定の公式サイトにてご確認くださいね!

実用数学技能検定(数学検定・算数検定)とは

「実用数学技能検定」(後援=文部科学省)は、数学・算数の実用的な技能(計算・作図・表現・測定・整理・統計・証明)を測る記述式の検定で、公益財団法人日本数学検定協会が実施している全国レベルの実力・絶対評価システムです。

おもに、数学領域である1級から5級までを「数学検定」と呼び、算数領域である6級から11級、かず・かたち検定までを「算数検定」と呼びます。

実用数学技能検定(数学検定・算数検定)公式サイトより

<実施団体>  公益財団法人 日本数学検定協会

<階級と受検の目安> 全15段階

●ゴールドスター、シルバースター(かず・かたち検定):幼児

●6〜11級(算数検定):小学1〜6年生

●1〜5級(数学検定):中学・高校・大学・一般

<受検のメリット>

●1級・準1級・2級取得で、文部科学省が行う「高等学校卒業程度認定試験(旧大検)」の「数学」試験免除

大学・短期大学・高等学校・中学校等での「入試優遇制度」(全国の高等専門学校・高等学校・中学校730校以上、大学・短大・専門学校450校以上 ※2017年12月時点)

●大学・高等学校・高等専門学校などで、一定の階級の実用数学技能検定取得者に対して、特定の科目の単位取得を認める「単位認定制度」(全国の大学・高等専門学校・高等学校320校以上)

<検定料>
1,700円(ゴールドスター、シルバースター、9~11級)~5,200円(1級)

<実施団体> 公益財団法人 日本数学検定協会

<公式サイト> https://www.su-gaku.net/

算数・数学思考力検定とは

算数・数学の問題を解くことを通じて、子どもの身についている「思考力」の程度を知るための検定です。
受検のための学習を継続的に行うことで、より高い思考力が身につき、また、目標ができることで学習のはげみにもなります。

速く計算したり、公式に数字を当てはめることだけでなく、物事を論理的に考え解決することや新しいものを発見したり創造することが大切になっている今、さまざまな角度から、子どもたちの考える力を探り、思考力を育むために役立つのが、算数・数学思考力検定です。

算数・数学思考力検定 公式サイトより

<階級> 全9段階

●10級:小学1~2年生程度
●9級:小学3年生程度
●8級:小学4年生程度
●7級:小学5年生程度
●6級:小学6年生程度
●5級:中学1年生程度
●4級:中学2年生程度
●3級:中学3年生程度
●準2級:高校1年生程度

<受検のメリット>
4級以上合格で、全国の高校での入試優遇措置あり(2018年12月時点で83校)

<検定料>
●10~4級:2,000円 ●3級:2,500円 ●準1級:3,000円

<実施団体> iML国際算数・数学能力検定協会 事務局

<公式サイト> http://www.shikouryoku.jp

基本データから「数学・算数検定」と「思考力検定」を比較すると

両検定の基本データを見てみると、以下のような違いがあることがわかります。

①「数学・算数検定」は算数の実用的な技能を測る検定、「思考力検定」は考える力(思考力)の程度を測る検定。
②「思考力検定」が10級〜準2級までの9段階(小学校1・2年生〜高校1年生程度)なのに対し、「数学・算数検定」は、幼児対象の「かず・かたち検定」から大学・一般対象の1級までの全15段階と、「数学・算数検定」のほうが対象年齢・レベルが幅広い。
③「数学検定」では、特定の級以上を取得すると入試で優遇される「入試優遇制度」を導入している学校が、現段階では「思考力検定」よりも圧倒的に多い。
また大学・高等学校・高等専門学校などで特定の科目の単位取得を認める「単位認定制度」があるなど、「数学検定」のほうが進学や就職面でのメリットが大きい。

・・・上記の②③を見ると、「算数・数学思考力検定」よりも「数学検定・算数検定」のほうがメリットが多いように思えます。

しかしながら上記2つのメリットはいずれも、数学領域である「数学検定」(5級以上)を取得した場合が対象であり、小学校低学年のお子さんが受検を考える際にはあまり関係がないものと思われます。

将来的に上級の「数学検定」合格を目指して、下の級の「算数検定」から継続的に取り組むというケースもあるかと思いますが、単純に小学校低学年時点で比較した場合、検定合格で得られるメリットという点であまり差はないと考えられます。

肝心なのは、上記①の部分。「検定で何を測るか」、すなわち検定で出題される内容の違いになります。

「算数検定」と「思考力検定」の内容の違いを、小学1・2年生対象の問題で比較してみると。

「算数検定」と「思考力検定」で出題される問題の内容を見てみます。

「算数検定」11級・10級の出題内容

「算数検定」の11級・10級で出題される内容は、
●11級では1年生程度の問題が90%+特有問題が10%
●10級では1年生程度の問題が45%+2年生程度の問題が45%+特有問題が10%
という構成になっています。

ちなみに特有問題とは、

あるきまりをみつけて答えを求める問題や、身近にあるものを題材にした問題などが出題されます。

(算数検定の協会発行問題集より)

「1年生程度の問題」「2年生程度の問題」とは、それぞれ以下の内容を指しています。

【小学校1年生相当の内容】

<検定の内容>
・個数や順番
・整数の意味と表し方
・整数のたし算・ひき算
・長さ・広さ・水の量などの比較
・時計の見方
・身の回りにあるものの形とその構成
・前後・左右などの位置の理解
・個数を表す簡単なグラフ など

<技能の内容>
身近な生活に役立つ基礎的な算数技能

①画用紙などを合わせた枚数や残りの枚数を計算して求めることができる。

②鉛筆などの長さを、他の基準となるものを用いて比較できる。
③缶やボールなど身の回りにあるものの形の特徴をとらえて、分けることができる。

【小学校2年生程度の内容】

<検定の内容>
・百の位までのたし算・ひき算
・かけ算の意味と九九
・簡単な分数
・三角形・四角形の理解
・正方形・長方形・直角三角形の理解
・箱の形
・長さ・水のかさと単位
・時間と時計の見方
・人数や個数の表やグラフ など

<技能の内容>
身近な生活に役立つ基礎的な算数技能

①商品の代金・おつりの計算ができる。
②同じ数のまとまりから、全体の数を計算できる。
③リボンの長さ・コップに入る水の体積を単位を使って表すことができる。
④身の回りにあるものを分類し、整理して簡単な表やグラフに表すことができる。

上記を踏まえて、実際の「算数検定」の過去問を見てみます。
※なお算数検定の過去問は、公式サイトからダウンロードすることができます。(https://www.su-gaku.net/suken/support/past/questions.php#grade11

算数検定11級の過去問

 

・整数のたし算・ひき算 

一桁・二桁の足し算、引き算

 

・個数や順番

数の基礎概念、多少判断(10以下)。
絵を見て、“7より多いもの”を選んだり、“いちばん少ないもの”を選ぶ問題。

 

・身の回りにあるものの形とその構成

立体図形(直方体、球、円柱)の絵を見て、ポテトチップスの入れ物やボールと同じ形のものを選ぶ問題。

 

・整数のたし算・ひき算

文章題(足し算;ぜんぶでいくつ、増えるといくつ、引き算;残りはいくつ)

 

・長さ・広さ・水の量などの比較

つなげたクリップの長さを比較する問題(同じ長さのものいくつ分で比べる)。

 

・長さ・広さ・水の量などの比較

違う大きさの入れものに、同じ高さまで入った水の量を比較する問題。

 

・特有問題

ネコがます目を通ってゴールまで行くための指示を、内容と順番を考えて組み合わせる問題。

算数検定10級の過去問

 

百の位までのたし算・ひき算

一桁〜三桁の足し算・引き算、一桁の掛け算の問題

 

・個数や順番

絵を見て、“シュークリームは左から何番め?”や、“右から4番めにあるおかしは何?”を考える問題(位置、順序数)。

 

・三角形・四角形の理解

方眼上に描かれた図形が、直角二等辺三角形いくつ分かを考える問題(図形の分割)。

 

・百の位までのたし算・ひき算

文章題;二桁同士の足し算(合わせていくつ)、引き算(違いはいくつ)

 

箱の形

はこ(直方体)の辺の数、面の数を考える問題

 

特有問題

11級と同様、ネコがます目を通ってゴールまで行くための指示を、内容と順番を考えて組み合わせる問題。

「算数検定」の問題は、学校で習う基礎的な内容がメイン

先に述べたとおり「算数検定」で出題されるのは、11級では1年生程度の問題が90%+特有問題が10%10級では1年生程度の問題が45%+2年生程度の問題が45%+特有問題が10%という構成になっています。

すなわち、ほとんどが当該学年の学校の教科書で習う内容から出題されるということです。

ちなみに合格基準は全問題の70%程度なので、学校の授業をしっかり聞いて理解し、宿題もきっちりこなしていれば(もしくは、先取りであってもしっかり対策していれば)合格できる出題内容であるということですね。

(もちろん、テストの形式や解答の仕方などにある程度なれておく必要はあるかと思いますが)

「思考力検定」10級の出題内容

一方、「思考力検定」の出題内容は、5つの【算数の内容の観点】3つの【考える力の観点】から成り立っています。

【算数の内容の観点】
・数と量
・空間と形
・変化と関係
・データと不確実性
・論理

【考える力の観点】
・情報・条件を使いこなす力
・筋道をたてて考える力
・物の形を認識・想像する力

この5つの【算数の内容の観点】と、3つの【考える力の観点】の組み合わせで、問題が出題されています。

その中で、小学校1〜2年生に相当する10級で検定する思考力は、以下のとおりになっています。

● いくつかの簡単な情報の中から必要な情報を選び出す力
● 試行錯誤しながら考える力
● 平面の図形を捉える力

すなわち「思考力検定」は、計算のスキルや図形に関する知識等を問うというよりも、どんな考え方・道筋で解くか?に主眼を置いた問題内容になっています。

「思考力検定」の過去問

それでは、過去に受検した2015年度の思考力検定10級の問題を見ていきます。

 

1.数のもんだい<数と量、情報・条件を使いこなす力>

(1)表と裏の数字を足すと7になる4枚のカードの裏の数字を全部足すと、いくつになるかを考える問題。(7の補数、1桁同士の足し算)

 

(2)空欄に1から7までの数を1つずつ入れて、正しい式を作る問題。

 

2.玉ころがし<変化と関係、情報・条件を使いこなす力>

玉の落ちる順番から、どの玉がどこに落ちるかを考える問題。
また、落ちた玉の位置を見て、転がす前の玉がどのように並んでいたかを考える問題。

 

3.形のもんだい<空間と形、物の形を認識・想像する力>

見本と同じ模様がどれかを考える問題。

 

左の紙の切り抜いたところにぴったりあてはまる形を選ぶ問題。

 

4.30まいのカード<データと不確実性、情報・条件を使いこなす力>

1から30までのカードのうち、数字の8、3、1が使われているカードがそれぞれ何枚あるかを考える問題。

 

5.考えよう<論理、筋道をたてて考える力>

(1)空いているマスに記号を書き入れて、どの列にも4つの形が1つずつ入るようにする問題。

 

(2)4つのヒントを読んで、絵の中からゆみさんがどれかを考える問題。

「思考力検定」は、“情報を使いこなして問題を解決する力”が問われる

このように、「思考力検定」の問題は、同じように「数」や「図形」をあつかう問題であっても、単純な計算問題や図形の知識を問うようなものではありません。

例えば上記の1.「数のもんだい」(2)の、3+□+□=1+□+5+□ という式の中に1~7までの数を一つずつ入れて式を完成させる問題では、1~7までの数の合計が28で、その半分が14だから、3+□+□=14、1+□+5+□=14になるように式を作ればいいんだ!というような、解き方の工夫を考えることが求められます。

また「3.形のもんだい」では、頭の中で図形を傾けたり、回転させたり自由に動かすイメージができることが必要になります。

「5.考えよう」の問題は、(1)ではすでに書き込まれている記号の位置をもとに、また(2)では文章で書かれた4つのヒントをもとに筋道立てて答えを導き出す、論理的思考力が問われています。

※ちなみに「思考力検定」の過去問はホームページ等で見ることはできませんが、「思考力検定」の対策テキスト「算数ラボ」の問題を、「思考力検定」のホームページよりダウンロードすることができますのでご参照ください!

算数・数学 思考力検定 ダウンロードページ http://www.shikouryoku.jp/challenge/index.html

「算数検定」と「思考力検定」の目的は。それぞれどんな人にオススメ!?

「算数検定」と「思考力検定」、実際の問題を比較してみるとよくわかるように、

「算数検定」は、その学年で習う教科書の内容が理解・定着できているかをはかるもの。

「思考力検定」は、問題を読み取って情報を整理し、筋道立てて答えを導き出す力や、図形を頭の中で自由にイメージしたり自由に動かす空間把握力などの“算数的思考力”をはかるもの。

ということが言えます。

すなわち、小学校1・2年生のお子さんが受検をするなら、それぞれこんな人にオススメです。

「算数検定」の受検をオススメするのはこんな人

・学校の教科書の内容が理解できているかを確認したい人

・子どもに「算数が得意」という自信を持たせてあげたい人

・検定の対策をすることで、教科書の学習範囲をカバーしたい人

「思考力検定」の受検をオススメするのはこんな人

・学校の勉強だけでは身につかないような算数的思考力を伸ばしてあげたい人

・中学受験に向けて、低学年のうちから準備したい人

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最後に

目標に向けて勉強する経験ができる、また結果が目に見えるかたちであらわれる「検定」の受検は、小学校低学年のお子さんにもオススメ。

今回ご紹介した2つの検定も、ホームページから過去問などを見てみることが可能なので、気になる方はいちどチェックしてみてくださいね!

※「算数検定(数検)」対策ができる教材についての記事はこちら>>>算数検定(数検)対策がばっちりできる小学生向けオンライン学習教材をご紹介

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