算数は積み上げの教科とよく言われるように、前に習ったことをもとに次の学習が進むため、わからないところをそのままにしておくと、どんどん理解するのが難しくなってしまいます。
スタート段階でつまずいたせいで「算数嫌い」になり、それが中学・高校の「数学嫌い」へとつながってしまう・・・ということのないよう、1年生の算数でのつまずきやすいポイントと対策方法を押さえておきたいもの。
私の教室では、それらの『つまずきポイント』も含めて、小学校で習う算数の基礎となる力をやしなう取組を幼児さんのうちから行っています。
小学校入学後に困らないだけの力を就学前につけておくことができればイチバンですが、実際に1年生になり、つまずきポイントに直面した時にもこれらの取組が役に立ちます。
小学校1年生の算数つまずきポイントとその対策法
つまずきポイント①数の構造、10進法の理解
数の構造、すなわち“1が10個あつまって10、10が10個あつまって100になる”という「10進法」のしくみの理解がすべての基本になります。
例えば、23なら10が2つと1が3つでできている、ということが理解できるかどうか、ということがポイント。
「10進法」の理解には、10のまとまりがわかりやすいもので数の構造を理解するのが有効です。
①「百玉そろばん」で10進法を理解する
『百玉そろばん』は、10個の玉が10列で100個になっているため、「10のかたまりが10個で100」という数の構造を理解するのにピッタリのツール。
教室では、幼児さんのうちから百玉そろばんを使い、「10とび」で数える(10,20,30・・・と10ずつ100まで数える)ことで、「10が2個で20」〜「10が10個で100」ということをインプットしています。
「10とび」のインプットと並行して、10進法の仕組みが理解できているかどうかを確かめるのに「いくつかな?クイズ」(百玉そろばんで適当な数を作り「いくつかな?」と聞く)をします。
例えば23なら、「10が2つと、あと3で23」とわかるかどうか。
10のまとまりが理解できていない子は、1からじゅんばんに玉を数えていかないと、いくつかわかりません。
その場合は、いったん3を戻して20にし「これはいくつ?」と聞いてみます。
ここで「20」がぱっとわからなければ、「10とび」で10のまとまりごとに数え「10が2個で20」となることを再度理解させます。
「20」がわかれば、20に再度3を加えて23にし、「20と3で23」となることを確認します。
②「お金」で10進法を理解する
10のまとまりがわかりやすい例としてお金(硬貨)を使うのも良い方法です。
可能であれば、お買い物に行って、数十円単位の商品を子どもに買わせてみましょう。
例えば、53円のアメを1個買う場合、10円玉5個と1円玉3個が必要とわかることで、「10が5個と1が3個で53になる」ということを理解させます。
実際にお買い物に行くのが難しければ、「さんすうセット」に入っている「おかね」を使い、お買い物ごっこでお金のやりとりをしながら学ぶのもいいですね。
つまずきポイント②1ケタ同士の足し算、引き算
そもそも一ケタの足し算、引き算がぱっとできるようにならなければ、繰り上がりも繰り下がりも当然できません。
これは九九と一緒で、繰り返しやることでできるようになってきますが、そのためにはいかに楽しく数をこなせるかがポイントとなります。
計算が苦手な子に無理やり百マス計算をやらせても、ますます嫌になってしまいかねません。
その場合は、ゲームをとおして足し算・引き算ができるやり方がおすすめです。
サイコロ2個を使ったすごろくあそび
教室では2~3歳児さん頃からすごろく遊びを始めます。
年少さん以降では、サイコロ2個を使って足し算・引き算を身につけていきます。
その際の進め方のステップは以下のとおり。
①目がかかれた普通のサイコロ2個を使い、2つのサイコロの目を合わせることで「合わせていくつ」(足し算)の意味を理解。
※引き算の場合は、2つのサイコロのうち多い方の数から少ない方の数を引いた数だけ進む、というルールで行う。
②2個のサイコロのうち1個を、目ではなく数字がかかれたものにする(数の抽象化)
③サイコロ2個とも、数字がかかれたもので行う(暗算)
・・・という順序ですすめていきます。
レッスン最後の5〜10分程度で繰り返し遊んでいるうちに、みんな一ケタ同士の足し算・引き算がスムーズにできるようになっていきます。
計算にニガテ意識があってドリルなどをやりたがらないお子さんは、このようにゲームをとおしてたくさん計算をする方法をおすすめします。
つまずきポイント③繰り上がりのある足し算・繰り下がりのある引き算(10の補数)
8+5、9+7のような繰り上がりのある足し算は、「あといくつで10になるか」という、『10の補数』を理解していることが基本になります。
『10の補数』がぱっと直感的に言えるようになるまでは、身近にある具体物を使って10の補数を理解させましょう。
おはじきやキャンディーなどの具体物を使う
おはじきやキャンディーなど、身近にある小さなものを10個使って、10の補数を考える遊びをします。
10個のうちのいくつかを隠して、見えている数から隠れている数を考えさせます。
はじめは隠れている数を少なくして、徐々に増やしていきましょう。
百玉そろばんで「10の構成」をインプットする
百玉そろばんを使って「10の構成」を視覚的にインプットしていくのも有効です。
やり方は以下のとおり。
玉をすべて右に寄せ、上から1段目は1つだけ左に寄せます。
2段目は2つ、3段目は3つ・・・・10段目は10個全部を左に寄せます。
②次に1段目から、「1と9で10」と言いながら、左端と右端の玉を両手で真ん中に寄せて合体させます。
同様に、2段目「2と8で10」、3段目「3と7で10」・・・10段目「10と0で10」まで行います。
なお、繰り上がりの足し算は「10を作る」考え方を使いますが、100玉そろばんを使って繰り上がりを理解するやり方は、以下の記事でご紹介しています。
つまずきポイント④文章題
算数の計算問題はできても文章題ができない、というお子さんは多いですよね。
文意を読み取る力がないために状況をイメージできず、『足し算なのか引き算なのかわからない』となってしまいます。
足し算・引き算にはそれぞれいくつかのタイプがあり、タイプによって立式が難しくなります。
足し算の2つのタイプ
例:かえるが4匹 水の中でおよいでいます。はっぱの上にも1匹すわっています。かえるは あわせて何匹いますか?
例:たかしくんは キャンディーを5個持っていました。お母さんに また2個もらいました。キャンディーは ぜんぶで何個になりましたか?
引き算の3つのタイプ
例:おさらの上に みかんが5個ありました。けいこさんが 2個 食べてしまいました。みかんは あといくつ残っていますか?
例:黄色い風船は 7個、赤い風船は 5個あります。黄色い風船は 何個多いですか?
例:5人の子どもが ボールあそびをしています。そのうち3人は 男の子です。女の子は 何人ですか?
・・・これらのパターンに分けることができます。
足し算の「合併」「追加」や引き算の「求残」の場合なら「これは足し算」「これは引き算」とわかっても、引き算の「求差」や「求補」だと式を立てることが難しくなる場合が多いです。
また、足し算であっても
たけおくんは りんごを2個 食べました。でも、まだ3個 りんごが残っています。りんごははじめ 何個あったのでしょう?
このような問題の場合、5-2=3 と式を書く子が多くいます。
答えは、頭の中で5と分かっているのですが、その5を求める式が2+3=5であるというのがわからないのです。
また時間軸をさかのぼって逆に考えるのが難しいため、どうしても「りんごが5個ある→2個食べる→3個残る」という、出来事の順序通りに式を書いてしまいがちです。
上記のとおり足し算や引き算にはいくつかのタイプがあるので、どのタイプの問題で立式できていないかを見極めて、できていないタイプの問題に対し理解をうながすことが必要。
また文章題の意味が読み取れない場合は、問題の内容を絵や図にかいて考えてみることが大事です。
「こぐま会 ひとりでとっくん 文章題」
「こぐま会 ひとりでとっくん 文章題」は、主に小学校受験を終えた年長さんが、小学校に入学するまでの間に算数の基礎を固める目的で作成された就学準備用のテキスト。
教室では、就学準備の目的のとおり年長さんで使用していますが、上記のような文章題のタイプによって立式ができない1年生のお子さんにも使用しています。
この問題集は、問題の内容がイメージしやすいように絵が描かれていたり、自分で絵を描いて考えるようになっています。
また基本的な1桁同士の足し算・引き算の問題が「合併」「添加」「求残」「求差」「求補」などの種類別に出題されているので、その子が理解できていないところをピックアップして取り組むことができるため使いやすいのもおすすめのポイントです。
最後に
小学校生活のスタートとなる1年生。
この段階で算数にニガテ意識を持ってしまうことのないよう、ぜひ「つまずきやすいポイント」とその対策方法を押さえておきましょう。
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