『1年生担任のための国語科指導法』を参考に。おうちでもできる「国語力」をつける方法

私の教室の小学生クラスは、国語や算数などの教科を教えるレッスンではないのですが、日頃から小学校の先生向けに書かれた書籍も参考のために読んでいます。

その中の1冊が『1年生担任のための国語科指導法ー入門期に必ず身につけさせたい国語力』。


クラス全員に達成感をもたせる! 1年生担任のための国語科指導法 ―入門期に必ず身につけさせたい国語力―

この本は、

すべての学びの基盤となる「国語科」をしっかり教えることが、「子どもの学習面でのすべての基礎」である。

のみならず、先生や友達の話をしっかり聞く、集中して書く、自分の考えを持ち、進んで発言する、といった「学習規律や学習に向かう姿勢」を形成することにつながる。

という前提のもと、国語科を「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「言語事項(ひらがな、カタカナ、漢字)」の領域に分けて、学校の授業での指導法が述べられています。

本書の内容から、小学校低学年のお子さんを持つ親御さんが、お子さんの国語力をあげるためにご家庭でも取り入れられる手法についてご紹介したいと思います。

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『一年生担任のための国語科指導法』から学ぶ、「国語力」をあげる方法

「話す力」をつける

本書で述べられている、「話すこと」の指導における“スモールステップ”は以下のとおり。

声を出すことに慣れる

自分の意見を持つ

「自分の意見・考え+理由」を言う

即興で話す

「話すこと」の最も基礎的なこととは「声を出すこと」であり、人前で話すことができないのは「発言内容に自信がない」だけでなく、人前で「声を出す」こと自体に自信がなかったり慣れていない場合があります。

まずは人前で「声を出す」ことに慣れることが、「話すこと」の指導では何より大切。
そして、声を出す場面で最も初歩的なのは「返事」。

その次の段階として、「自分の意見を持つ」「自分の意見・考え+理由を言う」「即興で話す」の3つのステップに関する指導法は、すぐにでもご家庭で取り入れられると思います。

「自分の意見、考えを持たせる」→まずは二択から

いきなり、高度な内容について自分の意見を持たせるのは1年生にとっては難しいこと。

まずは、「とても簡単な話題」で、なおかつ「二択」にして、自分の意見を「必ず」もつ癖をつけさせる。

(例:「クッキーとチョコ、どちらが好きか?」や「今日のぜ全員遊びは鬼ごっことドッジボール、どちらがいいか」など)

家庭でも、

「今日の晩ごはん、ハンバークとカレー、どっちがいい?」

「今度のお出かけ、遊園地と動物園、どっちにする?」

・・・などなど、どんな場合でも親が決めたものを押し付けるのではなく、必ず複数の選択肢を用意して選ばせるというのは、今すぐにでも取り入れられそうですね。

ちなみに私は教室のレッスンでも、テキストをする際に「どれからやる?」と、取り組む問題を子どもに選ばせたりしています。

とはいえ、「この中から選んで」と選択肢を絞って選ばせているので、順番の違いだけで、結局はこちらで選んだものすべてに取り組むことになるのですが・・・

形だけでも「自分で“やる”と決めた」という事実が大事で、「これをやりなさい」と押し付けられた場合よりも、取り組む際のモチベーションが違うと感じています。

これは「自分の意見・考えを持たせる」という目的からはちょっと外れますが、どんな場合でも「自分で選ばせる」ということを意識するのは、いろんな意味で重要になります。

意識して「自分の意見・考え+理由を言う」機会をつくる

自分の意見・考えを明確にしたうえで、「自分の意見・考え」を他人に納得させるには、そう考える理由や根拠を言う必要がある。

選択肢の中から自分がそれを選んだ理由が言える場合と「なんとなく」そちらを選んだ場合では皆の納得感が違うことをわからせる。

上で述べた「自分の意見・考えを持たせるーまずは二択から」に加えて、「なぜそちらを選んだのか」の理由を必ず言わせるようご家庭でも意識するとよいですね。
何か買ってほしいものがある場合、“なぜそれが必要なのか”をプレゼンさせて、親御さんを説得できれば買ってもらえる、というスタイルをとっているご家庭もあります。
ほしいものを買ってもらうためとなれば、お子さんは必死で、そのものの素晴らしさや必要性をアピールしようとして頭をひねるでしょう。
まさに、他人を説得するには納得できる「理由」が必要である、と身を持って体感できるのではないでしょうか。

「即興で話す」→さまざまな活動の後に感想を掘り下げて聞く

子どもに「話す力がついている」というのは、自分の思ったことや感じたことを「即興的に」言えること。

「即興性」を身につけるためには「即興的に話す場面を経験する」ことが必要。

例:帰りの会や読み聞かせ会の後、給食の後など、いろいろな活動の後に「感想」を問うことで、子どもたちの「即興的に」話す力を伸ばすだけでなく「振り返り」にもつながる。

「感想」を言うためには、それぞれの活動に積極的に、考えながら取り組む必要があるため、子どもたちが主体的に、やる気を持って取り組むことにもつながります。

ご家族でお出かけした後や、映画などを見た後に必ず感想を聞く、というのはすぐにでも取り入れられますね。
その際、たぶん子どもは「おもしろかった」だけしか言わないと思いますが、
「水族館で何がいちばん面白かった?」
→「イルカのショーが面白かった」
→「イルカのショーのどんなところが面白かったの?」
→「イルカがすごく高いところまでジャンプしていてすごかった」
・・・など、どんどん質問をして感想を掘り下げていくとよいですね。
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「書く力」をつける

文字をはじめて学習する小学校1年生には、まずは「書くこと」を楽しみ、丁寧さや正確さにこだわるよりも「たくさん書きたい」「文字を書くって楽しい」という気持ちを持たせることが最優先。

すなわち「習うより慣れろ」「質より量」

そのために意識するべきは、基礎的な文字の習得+「書きたいことをもたせて、どんどん書かせる」こと。
そのうえで、正しく、きれいに文字を書けるよう指導していくことが必要。

細かいことは気にせず、とにかく、たくさん書かせる!

文字を「正確に丁寧に少なく」書かせるのではなく、「細かいところはあまり気にせず、たくさん」書かせます。

そのための取り組みとして本書で紹介されている学習活動の例が、おうちでの取り組みとしても参考になります。

ひらがな帳で言葉あつめ

5分間タイマーをセットし、その日に習った字のつく言葉を、ひらがな帳の空いているところにどんどん書いていく。
終わったら隣の子とひらがな帳を交換して、何個書けたかを言い合う。

5分間など時間を一定にすることで、「昨日よりたくさん書けた!」という成長を実感させる、すなわち「成長の可視化」がポイントとのこと。
また、隣の子と交換して数えあうのは、自分の気づかなかった言葉に気づくため。
おうちでは親御さんと一緒に取り組めば、文字書きと同時に語彙力アップも期待できますね。

一人書きリレー(暗唱書き)

拡大した原稿用紙などマス目の紙を用意して、教科書の内容を口で言いながら書いていく。
(まだ教科書を暗唱できない場合は、教科書を見ながら視写してもOK)

1年生の教科書には、「は・を・へ」などの助詞や促音(ちいさい「つ」)など、言葉の重要な要素が意図的にちりばめられています。
そのため、教科書の内容を覚えるくらい音読したりしますが、それを「書くこと」にも活かしたのがこの取り組み。
教科書の内容を声に出しながら書くことで、目と耳を同時に使い音声言語と文字言語をつなげることが目的です。

繰り返し書くことで正しい表記法に慣れ、自然に身につけることができます。

「題名のある日記」で、”ひとつのことを深く見つめる力”を育てる。

「書くこと」の基礎力がついたら、次は「書きたいことを持たせる」場を設定することが重要。

子どもが楽しみながら自然と書きたいことを持ち、ほおっておいても自ら書く場をつくることで、自然と書く力がついていく。

※本書では、学級内での取り組みとして「クラス内文通」(クラスの友達同士で手紙を出し合う)が紹介されています。

お友だちとのお手紙交換をきっかけに、お子さんのひらがなの読み書きが急激に上達した、という経験をお持ちの親御さんは多いのではないでしょうか。

やはり、子どもが文字の読み書きを習得するには、誰かに何かを伝えたい、という気持ちがいちばんのモチベーションンになります。
本書でクラス内文通の次のステップとして紹介されているのは「日記」。
「相手のことを書く」ものである手紙より、「自分のこと」を書く「日記」は「自分の考えたことや思ったこと」を書く力を高めるのに向いているからです。
また、日記を書く際には「題名のつけられるもの」を書く、というのがポイント。
朝起きてから寝るまでのことをまんべんなく書くのではなく、ひとつのことを深く、詳しく(いつ・どこ・なぜ・どのように・だれと)書くことで、「ひとつのことを深く見つめることができる力」が育ちます。
私も、就学前~のお子さんの国語力を鍛えるために「絵日記」を書くことをすすめしているのですが、この「題名をつけられるもの」という点は、あらためて意識していきたいポイントだと感じました。
おうちで知育

お子さんの『国語力』を伸ばしたい、とお考えの方は多いですよね。 『国語力』とは、具体的には「読む」「聞く」「話す」「書く…

文字を正しくきれいに書かせるためのポイント2つ

本書で紹介されている、「文字を正しくきれいに書かせる」ためのポイントは、以下の2つ。

①とにかく、お手本を真似て書かせる。

字形をきれいにするには、とにかく「見て真似させる」ことに尽きる。

よくある「なぞり書き」は、字の形や書き順を覚えるためのものであって「字形をきれいにする」ための行為ではない。

真似をするためには「よく見る」ことが大切だが、ただ単に「よく見てごらん」というだけではなく、よく見るための「方法」や「観点」を示してあげることが必要。

例:「王」という字のお手本を見せ、「いちばん上といちばん下、どっちが長い?」と比較させる。

最終的には、自分の字とお手本を見比べて、お手本と違うところを自分の言葉で言えるようになることを目指す。


②即時評価・即時指導

ひらがな練習帳や漢字ドリルが丸つけされて子どものもとに返ってくる頃には、どんな文字を書いたか子どもの記憶には残っておらず、記憶にないことを赤ペンで直されてもほとんど意味がない。

つまり、子どもが書いた「その場」「その時」に評価する「即時評価・即時指導」が重要。

その際には、「評価の観点」を決めておくこともポイント。

「とめ・はね・はらい」はもちろんのこと「長短のバランス」などに関して、その字の「評価の観点」を決めておくことで、ただ単に「下手ね」「もっと丁寧に書きなさい」などと言うだけでなんの指導にもなっていない、ということが避けられる。

子どもが主体的に学ぶ漢字指導法

本書で述べられている漢字習得のステップは以下のとおり。

①漢字が読める

②漢字の大体の形がわかる

③漢字の細部(とめ・はね・はらい・長短)がわかる

④いろいろな漢字の読み方・使い方がわかる。

⑤漢字を自由自在に使える。

上記のように、漢字習得の第一歩は「読み」であり、まずは漢字をしっかり読めるようにすることが大切。

そのための指導方法として紹介されているのが「漢字ドリル音読」。

「漢字ドリル音読」

漢字ドリルの新出漢字の読みと例文を大きな声で、1冊すべて読む。

声を出して読むことで、目だけでなく耳からも覚えることができる。

すばやく読むことは「スラスラ読む」ことにもつながる。

漢字ドリルは「書くためのもの」という固定概念がありますが、この「漢字ドリル音読」で「漢字の読み」を確実に習得させると「漢字習得」の基盤ができあがり、その後は確実に書けることにつながっていくとのこと。

なぜなら「漢字ドリル音読」で繰り返し目にする漢字は子どもにとって「慣れ親しんだ漢字」となり、何も見なくても大体の形はイメージできるようになるからです。

新出漢字を学習するときに「はじめて見る漢字」として学ばせるのではなく、あらかじめ「読める漢字」「よく見る漢字」というスタートラインから学ばせることで習得しやすくなるというのがポイントです。

すなわち、上で紹介した「漢字習得のステップ」のうち最初の」2ステップをすでにクリアしていることになるので、あとは「とめ・はね・はらい」など細かいところをきちんと練習すれば書けるようになっていきます。

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「読む力」をつける

 

低学年においては、「読み上げるスキル」すなわち「スラスラ読めること」が最も重要。

「スラスラ読み上げること」もできない子が「人物の心情」を考えたり「自分なりの主題」を捉えたりすることが難しいのは容易に想像がつきます。

この時期に文字や文章を流暢に読み上げるスキルを身につけることは、後に「読解力」につながる。

本書で述べられている、「読みの上達の目安の4段階」は以下のとおり。

読みの上達の目安の4段階

・ハキハキ読み:ハキハキ大きな声で読むこと

・スラスラ読み:スラスラ、できる限りすばやく読むこと

・超正確読み:点や丸に気をつけて、書かれている通りに読むこと

・表現読み:間や抑揚に気をつけて、気持ちをこめて読むこと

最初から「スラスラ読みなさい」といってもなかなかできない子が多いので、はじめは「ハキハキ読み」で、とにかく「声を出させる」ことを意識することが重要になります。

スラスラ読めない場合、

・「文字」をスラスラ読めない

・「単語」をスラスラ読めない

・「文」をスラスラ読めない

上の3つの段階のどこでつまずいているかの見極めが必要。
例えば、「文字」をスムーズに発音することにつまずいている場合には、ひらがな一文字を指さして、すぐに言わせる。
できるようになったら、次は単語→次は文、というように段階を踏んで順序よく指導していくことがポイントになります。

最後に

小学校低学年のお子さんのお母さまから、「国語をどうやって教えたらよいかわからない」という声をいただきますが・・・
小学校低学年のお子さんであれば、長文読解のドリルなどをひたすらやらせる前に、まずは「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」といった国語力の基礎をつけることを意識して取り組んでみてはいかがでしょうか。

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