小学生の国語の問題集といえば「漢字ドリル」や「長文読解」がメインですが、『本物の国語力をつけることばパズル』は、麻布中学校・高等学校の国語の先生が、自分の言葉で「発信する力」「表現する力」をつけるために作った、ひと味違うドリルです。
『本物の国語力をつけることばパズル』の目的は
『本物の国語力をつけることばパズル』の著者は、国語教育で定評のある麻布中学校・高等学校の国語科教諭、中島克治先生。
・語彙が増える
・自分の言葉で考えを表現できる力がつく
・他者の気持ちを察し、言葉を通じて伝え合う力がつく
が特徴のドリルになります。
このドリルの裏表紙に、著者の中島先生からおうちの方へのコメントが書かれています。
それによると、
麻布の生徒たちの秀でた思考力と表現力の源泉は、幼少期の豊かな読書体験と、家庭内で読後感を共有するコミュニケーションにより磨かれた言語感覚によるもの、すなわち「身についた語彙」をどれだけ持っているかである
と書かれています。
そのためこのドリルは、小学生の間に身につけてほしい語彙・表現を学び、実際に使いこなせるようにすることが目的となっています。
なお、このドリルは入門編・初級編・中級編の3つに分かれていますが、いずれも「小学校全学年用」となっています。
いちおう「入門編」は小学校入学前後、「初級編」は低学年を想定されているそうですが、この年齢の子どもは個人差が大きいため、あえて学年別にしていないとのこと。
問題の構成は、入門編・初級編・中級編のいずれも似た感じですが、中級編になると同音異義語、ことわざ、格言なども含め使われている言葉の難易度もぐっと上がり、むずかしくなる印象です。
※問題数は、いずれも約50問(1ページ1問)
中級編のみ、巻末に『特別編 中島先生からの挑戦状』として、読解問題が2問、掲載されています。
『本物の国語力をつけることばパズル』の問題は大きく分けて3種類
実際の中身をご紹介します。問題は目的によって大きく3種類に分けられます。
①語彙を増やす
このドリルの多くを占めるのが、語彙を増やす問題。
主に、擬音語(自然の音や物音をあらわす)、擬態語(動きや様子をあらわす)や形容詞など、ようすをあらわす言葉が多くあつかわれています。
【入門編】「もぐもぐ」「とんとん」などの中から「食べるようす」をあらわす言葉を選ぶ。
【初級編】「さっきからずっと、じまん話を聞かされている。」→「うんざり」、「100問もある難しい問題が、最後まで全部解けた。」→「すっきり」など、状況と、気持ちをあらわす言葉を結ぶ。
【中級編】「安心する」ー「かたの荷が下りる」ー「胸をなで下ろす」など、似た意味を持つ言葉どうしを線で結ぶ。
②言葉あそびで感性を磨く。
アナグラム(綴りかえ)、回文(どちらから読んでも同じになる言葉)、暗号、クロスワードなどの言葉遊びを通じて言葉に関する感覚・感性を磨く問題。
【入門編】バラバラの文字を並べかえて、あいさつの言葉を作る。
【初級編】文を読んで、ますの中に都道府県の名前を入れるクロスワードパズルの問題。
③自分の考えを自分のことばで書く。
身近なテーマが与えられ、それに対する自分の意見を考えます。
※入門編・初級編では、まずは選択肢から自分の考え方と同じか考えに近い方を選び、他にもっといいやり方と、そのやり方がいいと思う理由も書きます。
【入門編】
あなたと弟は、1つずつプリンをもらいました。弟は自分の分をすぐに食べてしまって、「もっと食べたい。」と言いました。あなたなら、どうするかな。
他にも、「たん生日のお祝いはどんなふうにしたいかな。」「あなたが大きくなったら、してみたいことは何かな」など
【初級編】
友達と二人で、ぶらんこに乗って遊び始めました。そこへ、ほかの友達がきて、「ぼくも、ぶらんこに乗りたい。」と言いました。あなたなら、どうするかな。
他にも、「仲良しの友達が、〇〇さん(ほかの友達)は、のろまだね。あなたも、そう思うでしょう?と言いました。あなたなら、どうするかな?」「まんがにせりふを入れて遊ぼう。」など
【中級編】
あなたは、おこづかいの金額が、今よりもう少し多ければいいのにと感じています。どのようにお願いしたら、金額を増やしてもらえると思いますか。
他にも、
「友達が、『テストで100点をとったとうそをついたら、おばあちゃんがおこづかいをくれたよ。いいでしょう。』と言いました。あなたなら、どう考えるかな。」
「次の言葉について、宇宙人に教えてあげよう。国語辞典を使ってもいいよ。」(ドーナツ、海、小学校)
など
『本物の国語力をつけることばパズル』オススメの理由
「国語の問題集」っぽくない。
このドリルは基本的に1ページに1問、写真を見ていただくとわかるように、細かい文字がぎっしり詰まった長文読解の問題集などと違って空白の部分が多いです。
問題そのものもクイズのような感じで、“お勉強”というより遊び感覚で取り組めるような内容なので、国語がニガテなお子さんでも、取り組んでいくうちに”言葉に触れることが楽しい”、という感覚をやしなうことができます。
例文が子どもにとって身近でイメージしやすい。
新しいことばに触れた時に、使う場面が具体的にイメージできないと、実際に使える「身についた語彙」にはなりにくいですよね。
このドリルで取り上げられている言葉は擬音など、友達や家族との日常会話の中で使える言葉が多いです。
また例文や問題の題材も日常生活でよくある場面を取り上げているので状況がイメージがしやすく、その言葉をどんなときに使うかを、自分の体験に近づけて考えることができます。
自分の考えを、自分のことばで書く問題が出題されている。
2020年の教育改革により新しく導入される「大学入学共通テスト」では、国語と数学で「記述式問題」が出題され、英語では、従来の2技能(聞く、読む)から「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能評価となります。
すなわち、従来の試験では主に「読む・聞く」力が求められていましたが、新たな試験では「話す・書く」力が求められることになるのです。”自分の考えを言葉で書く”という練習が必要になってきます。
このドリルでは語彙を増やす問題と並んで、身近なテーマに対し「自分はどう思うか」「なぜそう思うか」を書く問題が、数は少ないですが出題されています。
(入門編・初級編・中級編にそれぞれ3問ずつ)。
いずれも、家庭や学校での生活場面でありそうな身近なテーマを題材にした問題なので、自分なりの意見を考えたり、その理由を文章にまとめて表現するトレーニングとして取り入れやすい内容になっています。
最後に
今後必要となる学力は従来とは大きく変わり、「国語力」は今まで以上に求められることになります。
自分のことばで「書く・話す」力、すなわち表現力を身に付けるには、日常的に意識することとして
・普段から本や新聞を読み語彙を増やす
・親子で対話する機会を増やしコミュニケーション能力をやしなう
・日記などで「書く」ことを習慣づける
などが考えられますが、さらに「自分のことばで表現する力をやしなう」ための教材として、この『本物の国語力をつけることばパズル』はとてもオススメです。
なおこちらの記事では、『本物の国語力をつけることばパズル』の他にも小学校低学年の「国語力」を伸ばすオススメのドリル・問題集をご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
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