小学生の親御さんによくあるお悩み、
「子どもがなかなか勉強に集中できない」
「塾に行かせても成績が上がらない」
これらはもしかすると、お子さんの「見る力」が原因の可能性があります。
お子さんが「見えにくさ」を感じていないかをチェックしてみると、改善策が見つかるかもしれません。
今回は、お子さんのさまざまな困りごとの原因になっているかもしれない『見る力』を鍛えるために、教室でも取り入れている教材『1日5分!眼と体を楽しく動かすビジョントレーニング』をご紹介します。
「見る力」の大切さとビジョントレーニングについて
教室の小学生クラスの生徒さんで、
・音読する時に読みとばしが多い
・百ます計算の時に行がズレていて間違えることが多い
・問題の意味が理解できない(問題の内容を口頭で説明してあげれば解ける)
・・・というお子さんがいます。
これらの原因として可能性があるのが、「ちゃんと見えていないかもしれない」ということ。
このことに思い至ったのは、私が以前講師として勤めていた七田チャイルドアカデミーが、目のトレーニング(ビジョントレーニング)を行う「目の学校」の運営も行っており、私もトレーナー養成コースの研修を受けたことがあって「見る力」の大切さを認識していたからです。
現代では、子どもが外遊びで眼と体を動かす機会が減っています。
テレビやスマホ、ゲームなど近くの小さな画面を凝視し続けることで「見る力」に問題のある子どもが増えているとも言われています。
「見る力」の大切さ
「見る力」に問題があると、以下のような様子が見られることがあります。
・勉強や作業に集中できない
・探しものをうまく見つけられない(よく物をなくす)
・図形の問題が苦手
・文字の読み間違いが多い
・本を読むのが遅い、行を飛ばして読んでしまう
・文章題の内容が理解できない
・文字を覚えるのに時間がかかる
・文字の書き間違いが多い
・書く時にマスや行からはみ出す
・図形がうまく描けない
これらの問題の原因となる「見えにくさ」を抱えたままだと、本人がいくら努力してもうまくできるようにならず、子どものやる気や自信をうばってしまうことにもなりかねません。
また「見えにくさ」の問題は他人と比較することができず、本人にとってはその状態が当たり前になっているため、周りや本人でさえ問題に気づきにくいのです。
ちなみに、上で述べたお子さんのお母さまに「もしかして、見る力に原因があるかもしれません」ということをお伝えしたところ、「視力検査では問題なかったんですが・・・」というお答えが返ってきました。
しかしながら、いわゆる一般的な視力検査で測る「視力」とは、止まった状態で単純な形を見分ける力のことであり、「見る」ために必要な力の一つにすぎません。
というのも、日常生活の中では動いているものを目で追ったり、黒板の文字(遠くのもの)と手元のノート(近くのもの)を交互に見る(→ピントをすばやく調節する)など、さまざまな力が必要になります。
視力検査で視力に問題がないからといって、ちゃんと”見えて”いるとは限らないのです。
「見る力」とは
ものを「見る力」は、大きく3つのプロセスに分けられます。
それが
の3つ。
①入力・・・眼でとらえた情報を映像として取り込む
必要な機能:
・視力(はっきり見る力)
・調節機能(ピントを合わせる力)
・眼球運動(眼球をすばやく動かして見たいものに視点を合わせる力)
②視覚情報処理…見たものの情報を脳で分析し認識する
必要な機能:視空間認知(眼でとらえたものの色・形・大きさ・空間的な位置などを認識する)
③出力・・・見たものに合わせて体を動かす
必要な機能:眼と体のチームワーク(視覚と体の動きを結ぶ一連の機能)
この3つのプロセスのうち1つでも正常に機能しなかったり、うまく連動しなかったりすると「見えにくさ」の原因になってしまいます。
『1日5分!眼と体を楽しく動かすビジョントレーニング』をレッスンに取り入れている理由
私の教室では、「見る力」に問題があることで学習に困難を抱えてしまっている可能性がある小学生のお子さんのために、レッスンにビジョントレーニングを取り入れています。
レッスンでは主に、見る機能の3つのプロセス ①入力 ②情報処理 ③出力 のうち、①の「入力」の部分を鍛える眼球運動を取り入れています。
その際に活用しているのが『1日5分!眼と体を楽しく動かすビジョントレーニング』。
30項目のチェックテストで、どのトレーニングを重点的に行えばよいかがわかる。
『1日5分!眼と体を楽しく動かすビジョントレーニング』には、見る機能の3つのプロセス、①入力②情報処理③出力 のすべての段階におけるトレーニング方法が掲載されているのですが・・・
ビジョントレーニングを始めるにあたり、冒頭の『子どもの見る力を調べてみよう 簡単チェックテスト』で30個の項目をチェックすることで、入力・情報処理・出力いずれの機能が不十分であるかがわかるようになっています。
チェックテストの結果に合わせて、子どもに足りない機能を重点的に鍛えればよいため効果的にトレーニングを行うことができます。
コピーして使えるワークシートが157枚も!すぐにトレーニングを始められる。
『1日5分!眼と体を楽しく動かすビジョントレーニング』では、「見る力」とは何か?についてや「見る力」の大切さなどについての解説がわかりやすく説明されていますが、その分量は全223ページのうち、冒頭の約20ページのみ。
あとはそのままコピーして使えるワークシート157枚と、それらの使い方を解説した実践的な内容で、この本が1冊あれば、そのまますぐにビジョントレーニングを始められるようになっています。
私の教室の生徒さんの場合は、上で述べたチェックテストの項目に加えて、眼球の動きを見ていると対象物の動きをなめらかに追うことができていないように見受けられたため、レッスンでは追従性眼球運動(眼球だけをなめらかに動かして対象物を追う動き)のトレーニングを中心に取り入れています。
ワークシートは3段階のレベル別に配置されており、さらにそれぞれのワークシートに対し、お子さんのレベルに合わせて難易度を調整できる取り組み方が紹介されているため、継続して行うことでより効果を上げられるようになっています。
なお毎回ワークシートをコピーして使用するのはけっこう手間がかかり面倒なので、そこは少し注意が必要です。
(ドリルのようにページを開いてそのまま使えるか、もしくは本誌から切り離して使用できるようになっていればより良いなぁとは感じます。)
ちなみに私は、B5判の本誌をA4サイズに拡大コピーすることで、子どもにとってより使いやすいよう工夫して使用しています。
チェックテストがなくてもできる、「目がうまく使えているか」の簡単なチェック方法
上述のチェックテストでは、お子さんの普段の様子をよく観察することで「見る力」がちゃんと機能しているかどうか確認することができますが、以下のような方法でも、お子さんが眼をうまく使えているかどうかを確かめることができます。
お子さんが”ちゃんと見えているか”気になる、という方は、いちどチェックしてみてください。
目がスムーズに動いているか?
ペンや鉛筆などの先にわかりやすいマークをつけたり、お子さんの好きなキャラクターのぬいぐるみなどを用意します。
親御さんがペンやぬいぐるみを持って、上・下、右・左、・斜め・円など好きなようにペンを動かします。
お子さんは顔を動かさずに目だけでマークを追い、両目がスムーズにマークを追えているかをチェックします。
うまく追えていない場合は、ものを眼でとらえる入力機能に問題があるかもしれません。
両目のチームワークがうまくいっているか?
(子ども本人が)目の前に自分の親指を立てて、指先に視点を合わせます。
そして、指先に視点を合わせたまま手を伸ばしたり縮めたりして、親指をゆっくり前後に動かします。
その時に、両目が寄ってしっかりと親指を追えているか?(両目の協調)をチェックします。
両目のチームワークがうまくいっていないと、親指を近づけた時に両目がうまく寄らずに、片方の目が逃げて(離れて)しまいます。
最後に
「見えにくさ」は、”勉強が苦手”の原因である一つの可能性にしか過ぎませんが・・・
眼がうまく使えていないことが原因であるとは思ってもいない場合が多いので、「もしかして、その可能性もあるかも・・・!?」と思われた方はいちどチェックしてみることをおすすめします。