「音読」の効果と目的は?小学生クラスで使用しているおすすめ教材もご紹介します。

小学校の国語の宿題の定番、「音読」。
私が子どもの頃(〇十年前)にはそのような宿題はなかったと記憶しているのですが・・・

「同じ話を何回も聞かされて正直ダルいな〜」、などと思いながらお子さんの音読を聞いている親御さんも、多いのではないかと思います。

近年、小学校で重要視されている「音読」の目的とは、いったい何なのでしょうか?
はたして、どんな効果があるのでしょうか?

今回は、小学校の国語科で行われる「音読」の目的と、脳科学的に見た「音読」の効果、そして私が小学生クラスのレッスンで使用している音読の教材をご紹介します。

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小学校の国語科での「音読」の目的とは!?

 

学校の教育課程(カリキュラム)を作成する際の基準となる「学習指導要領」。
その内容を明確にするために文部科学省が作成した「学習指導要領解説」から、音読について書かれた部分を抜粋してみます。

小学校学習指導要領解説 国語編

各学年における「読むこと」の指導事項

第1学年及び第2学年
語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること。

第3学年及び第4学年
内容の中心や場面の様子がよく分かるように音読すること。

第5学年及び第6学年
自分の思いや考えが伝わるように音読や朗読をすること。

音読に関する指導事項

音読には,自分が理解しているかどうかを確かめたり深めたりする働きと,他の児童が理解するのを助ける働きとがある。
自分のために音読する場合は,文字を確かめ,内容が理解できるか,どのように感じるかなどを,自分の声を自分で聞きながら把握していく。
他の人のために音読する場合は,音声化することによって,互いに理解し合っているかを確認し合うことになる。
また,一人一人の理解や感想などを音読に反映させることもある。

スラスラと音読ができるためには、ひろい読み(文字を1字ずつたどって読むこと)ではなく、言葉をまとまりとして読むことが必要になります。

文に書かれている言葉の意味や文の内容が理解できていなければ、すらすらと読むことはできません。

第1学年及び第2学年の指導事項に”語のまとまりや言葉の響きなどに気を付けて音読すること”とありますが、文に書かれている言葉がわかっていなければ”ひろい読み”になってしまい、”言葉の響きに気を付けて”読むことはできませんね。

また、第3学年及び第4学年の指導事項にあるように”内容の中心や場面の様子がよく分かるように”音読するには、内容の中心”がどこか?”場面の様子”とはどんなものか?がわかっていなければ、それらが良く分かるように読むことはできません。

逆に言えば、音読が上手にできるということは、文の意味や内容がしっかり理解できているということが言えますね。

「小学校学習指導要領解説」から見ると、小学校における音読の宿題の目的は、声に出してすらすら読めるようになること自体が目的というよりは、声に出してすらすら読めるようにするために文の内容を理解すること、すなわち「読解力」をつけること。

そして声に出して読むことで、文の内容をちゃんと理解できているかどうかを、自分や、聞いている人がチェックすること。
この2つが主な目的であると言えそうですね。

脳科学的に見た「音読」の効果とは

近年、脳科学の分野からも「音読」の効果が研究によって明らかになってきています。

脳機能科学者の川島隆太教授の研究結果によると、いろいろな作業をしているときの脳の状態を測定した結果、記憶や感情、行動をコントロールし、脳の中でもっとも程度の高い知的な活動をつかさどっている「前頭前野」が、「音読」や「計算」「漢字の書き取り」をしている時にいちばん活発に働くことがわかっています。

すなわち音読をすることで脳の多くの場所を活発に働かせ、前頭前野を鍛えることができるということになります。

また、音読は脳を活性化させるだけでなく、知識や記憶を定着させるのにも効果的だといわれています。

小学1年生から5年生を対象とした実験で、提示した単語を2分間で何語おぼえられるかというテストの前に2分間の音読をさせた場合、テスト前に何もしなかった場合よりも記憶できる単語の数が20%近くアップしたという結果が出ているそうです。

運動をする時に、いきなり体を動かすのではなくストレッチや準備運動をしてからのほうが最大の筋力を発揮できるのと同様に、事前に音読を行うことにより前頭前野が活発に動き、その結果脳全体がウォーミングアップされて、普段以上の力が出せるようになったということ。

つまり、学習をする前の準備運動として「音読」をすることで、その後の学習の効果がより高まるということがいえます。

参照:『子どもを賢くする脳の鍛え方』川島隆太(小学館)


子どもを賢くする脳の鍛え方-徹底反復読み書き計算

私が小学生クラスのレッスンで使用している「音読」ドリルの使い方:目的は2つ

上記のように、さまざまな効果が期待される「音読」ですが、私の教室でも、小学生クラスのレッスンに音読を取り入れています。
教材として使っているのが、「脳を鍛える大人の音読ドリル」。


脳を鍛える大人の音読ドリル―名作音読・漢字書き取り60日

「脳を鍛える大人の音読ドリル」には、夏目漱石の「坊っちゃん」や「吾輩は猫である」、宮沢賢治の「風の又三郎」「注文の多い料理店」、新見南吉の「ごん狐」など、誰もが子どもの頃にいちどは読んだことのある作品を含む日本名作文学が60作品掲載されています。

(とはいえ、わたくし恥ずかしながらこのドリルではじめて知った作品もたくさんありましたが・・・)

掲載されている文のボリュームは、少ないもので1ページ540字~多いもので758字。

音読用の作品が載っているページの裏面は、漢字の書き取り問題になっています。

また、音読トレーニングを5回するごとに前頭葉機能検査を行うためのテストがついていて、定期的に音読の効果を確かめることもできるようになっています。

(レッスンでは漢字書き取りやストループテストはいっさい使用せず、音読用の文章のみを使用しています。)

 目的その①「音読」の教材として

レッスンでは、こちらの「脳を鍛える大人の音読ドリル」を、一つ目には「音読」の教材として使用しています。

先に述べたように、学習をする前の準備運動として「音読」をすることで、その後の学習の効果がより高まるということがわかっています。
ですので、教室でも毎回レッスンのはじめに1つの作品を音読することで脳を活性化し、気分をレッスンモードに切り替えています。

私も生徒と一緒に声を出して音読するのですが、大きな声を出すことで、それまで多少疲れ気味だったりしたアタマがとてもスッキリしてくるのを実感できます。
レッスン冒頭に音読をすることで、これからのレッスンに向けて一気に集中力を高めることができます。

目的その②「暗唱」の教材として

二つ目は「暗唱」の教材として。
レッスンで音読した作品をおうちでも読んでもらい、見なくてもそらんじることができるようになったら教室で発表する、記憶力を高めるトレーニングとしても取り入れています。

日本の名作文学を暗唱すると聞いて「何のために名作文学を憶えるの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
「意味もわからず暗記して意味があるの?」「何か役に立つの?」と。

名作文学に限らず、幼児さんクラスで暗唱の課題にしている俳句や百人一首もそうですが、それらを憶えることに何か意味があるわけではありません。
憶える題材は何でも良くて、「意味の理解を求めず声に出して読み、記憶する」こと自体に意味があるのです。

暗唱によって脳の記憶の容量を大きくし、たくさんのことが早く憶えられるようになることが目的です。

小学生なのに「大人の」音読ドリルをおすすめする理由2つ

この教材はタイトルに「大人の」とあるとおり、本来は年齢とともに物忘れがひどくなってきたり、言いたいことがスッと言葉に出なくなってきたという自覚のある大人の方のための本。

実際Amazonのレビューを見てみると、中高年の方が脳機能の低下を防ぐためや認知症予防のために購入されているケースが多いようです。

では、なぜこの「脳を鍛える大人の音読ドリル」を小学生のレッスンで使用しているのか?
その理由は2つ。

理由その①日本の名作文学が題材に親なしむきっかけに!

これらの文章には、今はつかわない古い言い回しや漢字仮名遣い、また子どもたちが見たことも聞いたこともないであろうものの名前がたくさん出てきます。
なので、子どもたちははじめは読むだけでも一苦労ですが・・・

それらも含めて、名作文学の独特のリズムや美しい表現に触れられるところが、あえて「大人の」ドリルを使用している理由のひとつです。

「風の又三郎」の冒頭部分

どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも ふきとばせ
すっぱいかりんも ふきとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう

の部分などは小気味よくて、だいたいの子が1回読んだだけでおぼえてしまうほど印象的です。

またテキストには冒頭部分までしか載っていないので、「つづきはどうなるの~」と気になって、図書館でその本を借りてきて読む子もいるなど、名作文学に触れるきっかけにもなるところもポイントです。

理由その②文章のボリューム・難易度がちょうどよい!

私の教室では、暗唱の課題として年少前・年少クラスで”俳句”、年中・年長クラスで”百人一首”に取り組んでいます。

そこから小学生になって「脳を鍛える大人の音読ドリル」に変わるので、子どもたちが初めてこの暗唱の課題を見たときにはみな一様に「えー長い~」「むずかしそうー」という反応です。

確かに、俳句や百人一首にくらべると文字数もだんぜん多いですし、漢字もいっぱい。
小学校の教科書に出てくる文章と比較しても、ずいぶん難しいですしね。

しかしながら、先程述べたように、小学校で出される音読の宿題の主な目的は「文の内容を理解できているかをチェックする」こと。

一方で、私がレッスンに音読を取り入れている目的は、あくまでも音読によって「脳を活性化」しレッスンの効果をより高めることと、意味の理解を求めない「暗唱」によって記憶力を高めることであり、お話の内容理解は二の次。
小学校の宿題とは目的が違ってくるのです。

ですので、敢えて小学校の国語の教科書に比べたら難易度の高い文章を用いて、カンタンではないけれどすぐにできるものでもない、というレベルにチャレンジしてもらっているのです。

なお、川島隆太教授によると、「音読」の際に何を読むかは問題ではなく、かんたんな文章でも難しい文章でも、まったく意味のわからない文章でも、とにかく文字を声に出して読むということ自体が肝心だとのこと。

なので、音読の素材を選ぶ際には、読むことを継続するモチベーションを保てるかどうか、がポイントになってきます。

読書の好きな子や記憶力の良い子は、学校の教科書だと簡単すぎてすぐに憶えてしまい、物足りなく感じるかもしれません。
もしおうちで学校の宿題以外にも音読に取り組ませたい、という場合、このドリルはオススメです。

最後に

読解力をつけたり脳を活性化するなど、さまざまな効果が期待できる「音読」。
学校の宿題だけにとどまらず、子どもが楽しく取り組めて、ますます能力を高められる教材で、積極的に「音読」に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

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