お子さんの学習や発達に不安を感じている保護者の方にとって、お子さんの現状を適切に評価することは重要な課題。
その中で、「KABC-II(カウフマンアセスメントバッテリー)」という心理検査が注目されています。
「KABC-Ⅱ」はWISCと並ぶ代表的な知能検査ツールで、知能検査では唯一、読み・書き・算数や語彙などの基礎学力を測る「習得尺度」の評価も取り入れられているのが特徴。
得意な情報処理の仕方や計画性、理解定着力などの認知処理能力(「認知尺度」)と基礎学力の両方を測定することで、具体的な学習支援に繋げることが期待できる検査となっています。
本記事では、
- KABC-IIではどのような能力を測定するのか?
- KABC-Ⅱを受けることで何がわかるのか?
についてお伝えします。
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KABC-Ⅱとは
KABC-Ⅱ(カウフマン・アセスメントバッテリー・フォー・チルドレンⅡ)では、子どもの得意な認知スタイルを見つけるとともに基礎学力的につまずきがあるかどうかを測定します。
子どもの得意分野と苦手分野を明らかにし、その子の認知処理スタイルに適した学習方法を発見できるため、個別の教育計画や学習支援に役立てることが可能。
各下位検査ごとに行動観察チェックリストが設けられており、子どもの行動特性も評価できます。
幼児や障害のある子どもでも公平に測定でき、特に発達障害のある子どものアセスメントに有効な検査となっています。
・対象年齢:2歳6ヶ月から18歳11ヶ月まで
・実施時間:約30分~120分(年齢により異なる)
・健康保険が適用
KABC-Ⅱでわかること
KABC-Ⅱには、認知処理の特性を明らかにする「認知尺度」と、基礎学力の習得度を評価する「習得尺度」があり、それぞれに4つの尺度があります。
【認知尺度】 | ・情報を受け取って、覚えたり考えたりする力 ・新しい場面や初めての問題を解決する力 |
・継次尺度 | ・順番に連続して入ってくる情報を受け取って、覚えたり考えたりする力 ・ものごとを順序立てて覚えたり、考えたりする力 |
・同時尺度 | ・入ってきたいくつかの情報同士の関係をもとに、考えたり覚えたりする力 ・ものごとを全体的にまとめて理解したり、考えたりする力 |
・学習尺度 | ・目や耳から入ってきた情報を持続して覚えておき、しばらくしてから思い出す力 |
・計画尺度 | ・課題解決の仕方を決めたり、途中で柔軟に修正したり、見直したりする力 |
【習得尺度】 | ・これまで学校や家庭などで身につけてきた力 ・知識や言葉の力、教科の学習に関する技術 |
・語彙尺度 | ・文字や言葉の読み ・文章の理解 |
・読み尺度 | ・言葉の意味理解 ・言葉による表現力 |
・書き尺度 | ・文字や漢字の書き ・文を作成する力 |
・算数尺度 | ・計算力 ・数を扱う推理力 |
①得意な「認知処理」スタイルがわかる
KABC-Ⅱの【認知尺度】の項目のうち「継次尺度」「同時尺度」の数値で、お子さんのものごとの”わかり方”(認知の仕方)は「継次処理」と「同時処理」どちらが得意か?がわかります。
①継次処理スタイル
「継次的」とは、時間的順序にしたがってものごとがなされること。
すなわち、一つ一つの情報を時間的な順序で処理していくのが「継次処理スタイル」の特徴です。
継次処理スタイル
・情報を一つ一つ順番に理解し、それらをつないで全体を捉えることが得意(部分→全体へ)
・聴覚からの情報収集・理解が得意
そのため、学習するときには始めから順序だてて行うことを好みます。
②同時処理スタイル
複数の情報をその関連性に着目して全体的に処理するのが「同時処理スタイル」。
継次処理が得意な子どもとは反対に、「全体から部分へ」という方向を踏まえます。
同時処理スタイル
・物事の全体像をイメージし、情報と情報の関係を把握していくことが得意(全体→部分へ)
・視覚からの情報収集・理解が得意
「継次タイプ」と「同時タイプ」それぞれの特徴を、部屋の掃除を例にあげると以下のとおりになります。
継次タイプの場合
「最初に、床に落ちているものを拾ってね」→「次に、洗濯物を洗濯機に入れてね」→「最後に掃除機をかけてね」
・・・のように、順序だてて指示されるほうがわかりやすい
まず最初に、きれいになった状態の部屋の写真を見せて「この通りに部屋を片付けてね」・・・のように、まずは最終ゴールを見せるほうがわかりやすい
通常、多くの子どもは、多少の強弱はあっても2つの認知処理スタイルがバランスよく発達しますが、学習につまずきのある子どもの多くは得意・不得意が極端なため、不得意な認知処理スタイルで学習すると理解がむずかしくなってしまいます。
例えば漢字学習ひとつとっても、どちらの認知スタイルが得意かによって、効果的な学習方法は全く違います。
不得意な方法で学習しても効果が上がらないだけでなく、苦手意識が強くなって逆効果になってしまう危険性も。
※継次処理・同時処理についてはこちらの記事で詳しく説明しています>>>学習のつまずき解消のヒントをくれる!『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』
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②「ワーキングメモリ」と「長期記憶力」がわかる
KABC-IIでは子どもの認知能力を多面的に評価しますが、特に記憶力に関しては「短期記憶尺度」と「長期記憶と検索尺度」の2つの尺度を通じて詳細に測定します。
継次尺度(短期記憶尺度)
「短期記憶尺度」はワーキングメモリ、すなわち情報を一時的に保持し、必要に応じて操作する能力を評価します。
継次尺度(短期記憶尺度)の検査内容
・数唱:口頭で言われた一連の数字を、同じ順序で復唱する。
・語の配列:影絵で示された中から、いくつかの物の名前を言われた順序のとおりに指さす。
・手の動作:一連の動作で見せられた手の動作を同じ順序で繰り返す。
KABC-IIでは、視覚的および聴覚的な刺激に対する記憶力を測定する下位検査が含まれており、子どもがどのような形式の情報を短期間で記憶しやすいかがわかります。
学習尺度(長期記憶と検索尺度)
「長期記憶」と「検索尺度」では、学習した情報を長期間保持し、必要なときに適切に取り出す能力を評価します。
学習尺度(長期記憶と検索尺度)の検査内容
・語の学習:無意味な名前がつけられた架空の絵を見て、次のページの一連の絵の中から、言われた名前の絵を指さす。
・語の学習遅延: [語の学習]を終了し一定時間後に、[語の学習]で覚えた名前の絵を指さす。
KABC-IIでは、視覚的な情報やその名称に関する記憶と検索の力を測定する下位検査が含まれており、子どもがどのような情報を長期的に記憶しやすいか、またその情報をどのように検索するかを明らかにします。
この尺度は、学習した内容を定着させたり、覚えた内容を再利用する能力に関連しているので、子どもへの効果的な学習支援の方策を立てるのに役立ちます。
③「基礎学力」がわかる
はじめに述べたとおり、KABC-Ⅱは知能検査では唯一、読み・書き・算数や語彙などの基礎学力を測る「習得尺度」の評価が取り入れられているのが特徴。
語彙力:獲得している語彙の量や理解力、表現力
読み能力:文字の読みや文の読解力
書き能力:書字や作文力を評価
算数能力: 計算力や数的処理能力
これらの基礎学力は「習得尺度」として分類され、子どもがどの学年相当の学力を持っているか、また特定の教科における得意・不得意を明確にすることができます。
「習得尺度」の検査項目
語彙尺度(結晶性能力尺度)
・表現語彙:絵や写真を見て名前を答える。
・なぞなぞ:なぞなぞを聞き、答えの絵を指さすか単語で答える。
・理解語彙:読み上げられた単語が示す絵を指さす。
・数的推論:絵を見ながら問題文を聞いて、それに答える。
・計算:計算問題を解く。
読み尺度 および 書き尺度(読み書き尺度)の検査項目
・ことばの読み:提示されたひらがな、カタカナ、漢字を声に出して読む。
・ことばの書き:ひらがな、カタカナ、漢字を書く。
・文の理解:動作を指示する問題文を見て答えたり、その通りの動作を行う。
・文の構成:示されたことばを使って文をつくる。
まとめ
KABC-Ⅱでわかること
①得意な「認知処理」スタイルがわかる
継次処理スタイル・・・一つ一つの情報を段階的、順序的に処理するのが得意。
同時処理スタイル・・・全体的に捉えた後に、部分的に情報を処理するのが得意。
②「ワーキングメモリ」と「長期記憶力」がわかる
継次尺度(短期記憶尺度)・・・ワーキングメモリ(情報を一時的に保持し、必要に応じて操作する能力)を評価
学習尺度(長期記憶と検索尺度)・・・どのような情報を長期的に記憶しやすいか、またその情報をどのように検索するか
③「基礎学力」がわかる
語彙力:獲得している語彙の量や理解力、表現力
読み能力:文字の読みや文の読解力
書き能力:書字や作文力を評価
算数能力: 計算力や数的処理能力
・・・どの学年相当の学力があるか
KABC-Ⅱでは、認知処理過程(継次処理・同時処理、学習能力、計画能力)と知識・技能の習得度(語彙、読み、書き、算数・数学)の両面から評価して、子どもの得意な認知処理スタイルを見つけるとともに、基礎学力につまずきがあるかどうかを測定します。
すなわちKABC-Ⅱを受けることで、お子さんの認知処理スタイルに適した学習方法を知り、最小限のストレスで学力を伸ばすことが可能に。
なお学習につまずきがあるお子さんにおすすめのオンライン学習『すらら』では、2歳6ヶ月~19歳未満のお子さんを対象に「KABC-Ⅱ」の検査を受け付けていますので、ご興味のある方は一度チェックしてみてくださいね!