音韻操作と語彙力を鍛えて「読み書き」能力を伸ばす方法。『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』より

『特別支援教育をサポートする  読み書きにつまずく子への国語教材集』は、ことばの教室(言語障害通級指導教室)の現場で実際に使用された、「読み書き」学習の基礎となる11の能力を伸ばすための教材が収録されている本。

今回の記事では、本書に掲載されている国語教材のうち、「読み書き」学習の基礎となる11の能力の中でも最も大切な土台となる ①音韻操作(音韻認識)②語彙 の能力を伸ばす指導方法についてご紹介していきます。

なお、『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』で紹介されている

  • 「読み書き」の課題の背景にはどんな原因があるのか?
  • 「読み書き」の支援にあたって気を付けることは?
  • 「読み書き」学習の基礎となる11の能力とは?

については、別の記事でご紹介しています。>>>関連記事:「国語が苦手」な原因と、読み書き学習の基礎となる11の能力とは。『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』より

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CD-ROM付き 特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集 (発達障害を考える 心をつなぐ)

①『音韻操作』の教材と指導方法

音韻操作とは、言葉がどのような音のかたまりに分かれるかを認識し操作すること。

読み書きの定着には、この『音韻操作』の能力が必要になります。

音韻操作の例:

◇「つくえ」ということばが「つ・く・え」の3つの音からできていることがわかる。

◇「「つくえ」の語頭音は「つ」、語中音は「く」、語尾音は「え」であることがわかる。

◇「つくえ」を「えくつ」と逆から言うことができる。

就学前までに3文字の単語の音の認識と操作が身につき、読み書きの基礎が完成すると言われていますが・・・

読み書きにつまずいている子の場合、この音韻操作の能力が身についているかを確かめる必要があります。

りんこ
『音韻操作』の力をやしなう取り組みは以下のとおり。

ちがうことばにかえてみよう

取り組みのねらい

音韻操作
・ことばの音の並びを理解する
・一つの音を抜き出す
・音の順番を入れかえる
などを身につける

ことばに文字を加えたり、順番や一部を入れ替えたりしながら別のことばをつくります。

<取り組み方>

1.指導者が問題を読み、示されたことばに文字を加えると、どんなことばになるかを考える。

「うし」のはじめに「ぼ」をつけると?   〇うし
(答え:ぼうし)

「かば」のさいごに「ん」をつけると?   かば〇
(答え:かばん)

2.文字を加える学習に慣れてきたら、文字を入れ替える学習に進める。

「ひま」のはじめの字を「こ」にかえると?  〇ま
(答え:こま)

「うちわ」のまんなかの字を「き」にかえると?  う〇わ
(答え:うきわ)

りんこ
慣れてきたら、子どもに問題を読んでもらいましょう。

一般的には、就学前までに3文字のことばの音韻操作ができるようになると言われています。

まずは3文字の音韻操作が確実にできるようにしていきましょう。

文字をならべかえてみよう

取り組みのねらい

音韻操作
・ことばの音の並びを理解する
・音の順番を入れかえる
・文字と音を対応させる
などを身につける

文字を並べかえて、文字列の中に隠れている意味のあることばを見つけます。

<取り組み方>

1.指導者が、配列された文字を子どもに見せながら読んで聞かせ、子どもは聞きながら文字を読む。

2.読み上げられた文字を、意味のあることばになるように並べ替える。

めか→〇〇
(答え:かめ)

だごん→〇〇〇
(答え:だんご)

うこひき→〇〇〇〇
(答え:ひこうき)

慣れてきたら、

・教材(文字)を見せずに口頭のみで伝える
・読み上げる速度を変える

・・・など難易度を上げて取り組んでみましょう。

りんこ
逆に難しい場合は、文字のチップなどを用いて実際に入れ替えてみるところから始めてもよいですね。

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➁『語彙』の教材と指導方法

語彙とは、知っていることばの数のこと。
文字を読んだり書いたりするためには、年齢にともなった語彙の獲得が必要となります。

「読み書き」の支援で大切なのは、ただ文字が「読める」「書ける」ことを狙いとするのではなく「語彙を獲得していく」ための学習にすることが大切です。

りんこ
『語彙』を増やすための取り組みは以下のとおり。

つながることばをこたえよう

取り組みのねらい

文章の文脈から、ことばを思い起こしたり、ものの名前を覚えたりする。

問題の文脈をヒントにして、同じような関係性で文章のあとにつながることばを考えます。

<取り組み方>

1.指導者が、子どもに問題を読んで聞かせる。

2.問題の文脈をヒントにして、そのあとにつながることばを考えて答える。

つくえは かぐ。おさらは・・・?
(答え:食器)

パンダは ちゅうごく。カンガルーは?
(答え:オーストラリア)

パーにかつのはチョキ。グーにかつのは・・・?
(答え:パー)

りんこ
一回聞いただけでは問題を覚えられない場合は、何度か読んであげたり、問題を見せながら読んで聞かせるようにしましょう。

さて、なんでしょう?

取り組みのねらい

複数の情報から、ものの名前を思い起こしたり、その名前を書いたりできるようにする。

複数の単語をヒントに、そこから思い起されることばを書いていきます。

<取り組み方>

1.はじめに、問題にはそれぞれ「いきもの」「場所」「お話」などのテーマがあり、答えはそのテーマに沿ったものであることを子どもに伝える。

2.問題となる複数の単語を読んで、それらが何を示しているのかを考えて解答欄に書く。

<いきもの>
はな・とぶ・はり・みつ・ぶんぶんぶん
(答え:はち)

<ばしょ>
ランドセル・きゅうしょく・べんきょう・せんせい
(答え:学校)

<おはなし>
・かめ・うみ・りゅうぐうじょう・たまてばこ
(答え:浦島太郎)

複数の情報をもとにしてことばを思い起す問題は、短文による問題(つながることばを答えよう)よりも情報量が多くなります。

子どもが混乱してしまう場合は、知っている単語に〇をつけさせて、そこから連想できることばを考える活動にしてもOK。

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ジャンケン!どんなもの?

取り組みのねらい

修飾することばや、対照的な意味をもつことばを思い起こしたり、書いたりできるようにする。

示されたことばから連想される、「もの(名前)」「音(ようす)」「反対ことば」などを考えて、解答欄に書きながらゴールを目指します。

<取り組み方>

1.二人で取り組み、それぞれ1コースか2コースかを選ぶ。

2.ジャンケンをして勝ったほうが、自分のコースに書かれたことばを読み、思い起こされることばを解答欄に書いていく。

3.ジャンケンを繰り返し、ゴールを目指す。

じゃんけん!どんなもの?

1コース

おおきいもの→
あかいもの→
つめたいもの→
あまいもの→
・・・・

コース

ちいさいもの→
くろいもの→
あついもの→
からいもの→
・・・・

ジャンケン!どんなおと?

1コース

せき→
なみ→
ふうりん→
すいどう→
・・・・

2コース

あめ→
でんしゃ→
かみなり→
とけい→
・・・・

じゃんけん!はんたいことば

1コース

ながい→
おおきい→
かなしい→
つよい→
・・・・

2コース

たかい→
おもい→
あつい→
おおい→
・・・・

ゴールに向かって次々に進んでいくやり方の他、1つのことばに対して、複数のことばを思い起す活動にしてもOK。

また勝ちにこだわる子どもの場合は、一人で取り組ませても。

タイムを計ることで、時間を意識させる活動につなげることもできます。

りんこ
競うことが活動のメインになってしまわないよう、楽しみながら取り組みましょう。

ことばなぞなぞ

取り組みのねらい

尋ねられている内容を理解して、ことばを思い起こせるようにする。

短文をヒントにして、そこから思い起こされることばを考えます。

<取り組み方>

1.なぞなぞの問題を読んで答えを考えさせる。

2.考えた答えについて、知っていることを話し合う。

3.繰り返し、答えを確認したり書いたりしながら、ものの名前を覚える。

※音読は黙読よりも難しいため、どちらで取り組ませるかは子どもの読みの能力に合わせて決めましょう。

ことばなぞなぞ

<たべもの>

・あきに とれる きのみで らに とげが たくさんあります。
(答え:くり)

・うえから よんでも したから よんでも おなじ なまえの あかい やさいです。
(答え:トマト)

<いきもの>

・ふゆに とおくの くにから やってくる しろい とりです。
(答え:はくちょう)

・かえるの こどもです。やがて てや あしが はえます。
(答え:おたまじゃくし)

りんこ
答えの最初の文字だけを教えるなどヒントを出して、できる限り子どもが自分で答えを言えるように工夫しましょう。

コロコロさいころゲーム

取り組みのねらい

ものの名前や動きをあらわすことばを思い起こしながら、語彙を増やし、適切な使い方を覚える

マスの中の絵や言葉から、ものの名前や鳴き声、ようすなどを連想して答えます。

<取り組み方>※二人以上で取り組む

1.サイコロを2回振り、1回目の数(縦軸)と2回目の数(横軸)がぶつかるマス目の問題に答える。

マス目に動物の絵が描いてある場合

例:猫の絵→名前や鳴き声を答える。

マス目に動詞が書いてある場合

例:「ひかる」→「ほし」などと、思い起こした言葉や様子を答える。

2.答えたマス目に書かれた点数を計算し、合計点の多さを競う。

「とぶ」→「飛行機」「かえる」など、名前を複数こたえる活動にすることもできます。

また動物の絵の場合は、どのような動物かを説明する活動にしてもOK。

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ようすをあらわすことば

取り組みのねらい

周囲とのコミュニケーションを豊かにするために、ことばを修飾する擬音語や擬態語の使い方を覚える。

示された単語や短文から連想される、物音(擬音語)やようす(擬態語)をあらわすことばを探します。

<取り組み方>

1.ものの動きやようすをあらわす内容の単語や短文を読む。

2.単語や短文の内容から予想されることばを探して、線で結ぶ。

例:はちが とぶ → ぶんぶん

3.結んだことばを声に出して読む。

ことばでのコミュニケーションを豊かにするためには、擬音語や擬態語などの活用も重要。

りんこ
声に出して読むことで定着させましょう。

ことばのたしざん

取り組みのねらい

二つ以上の単語から成り立つ「複合動詞」の意味を理解し適切な使い方を覚える

短文の文脈と、選択肢にある動詞の組み合わせをヒントにして、複合動詞を完成させます。

<取り組み方>

1.短文を読み、文脈に関係がある動詞の組み合わせを選択肢から選ぶ。

2.選んだ動詞の組み合わせが、どのようなことば(複合動詞)になるかを考えて答える。

3.答えを解答欄に書く。

例:なつの よぞらに はなびを・・・・

【動詞の組み合わせ】うつ+あげる

【複合動詞】うちあげる

完成させた複合動詞の意味を考える学習につなげることもできます。

短文からだけでは動詞の組み合わせを想像することが難しい場合は、選択肢の複合動詞を完成させるだけの学習にしてもOK。

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まとめ

今回ご紹介した『音韻認識』と『語彙』の能力は、「読み書き」を学ぶ上での基礎中の基礎。

お子さんが「読み書き」につまずいているようであれば、まずはこれらの能力がしっかり身についているかどうかを、取り組みをとおして確かめてみましょう。

なお、『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』で紹介されている

  • 「読み書き」の課題の背景にはどんな原因があるのか?
  • 「読み書き」の支援にあたって気を付けることは?
  • 「読み書き」学習の基礎となる11の能力とは?

については、別の記事でご紹介していますので、こちらもご参照ください。>>>関連記事:「国語が苦手」な原因と、読み書き学習の基礎となる11の能力とは。『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』より

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