計算がニガテな子が計算力を高めるには、当然ながら計算の練習が必要。
計算の数をこなすこと、すなわち計算ドリルや百ます計算のようなものが思い浮かびます。
しかしながら、小学校低学年で「計算ドリル大好き!」というお子さんは少ないのではないでしょうか?
ましてや「計算がニガテ」なお子さんなら、ひたすら計算のために計算をする計算ドリルが好きなわけがありません。
理想は本人も気づかないうちに計算をたくさん行い、いつのまにか計算力が身についている、という状態。
小学生ではパズルやクイズなど、計算を”目的”ではなく”ツール=道具”として用いながら解く面白い問題を活用するのがおすすめです。
そのような、”計算をツールとして用いながら取り組める面白い問題”が、「強育ドリルシリーズ」の『考える力を育てる強育パズル たし算パズル』。
・計算力、数の組み合わせの感覚
・論理的思考力
・試行錯誤する力
・・・が身につく、思考力系算数のオススメ教材です。
『考える力を育てる強育パズル たし算パズル』とは
【宮本算数教室の教材】強育パズル18 たし算パズル 初級編 【小学校全学年用 算数】 (考える力を育てる)
『考える力を育てる強育パズル たし算パズル』は、他の記事でご紹介している
『国語と算数を同時に伸ばすパズル』
『賢くなるたんていパズル』
『強育パズル かけ算・わり算が得意になる九九トレ』
などと同じく宮本算数教室の教材。
無試験先着順で生徒を募集しながら、最終在籍生徒の80%以上が首都圏の最難関校(開成、麻布、栄光、筑駒、駒東、桜蔭、フェリス)のいずれかに進学するという驚異的な実績を挙げている宮本算数教室。
算数の導入として非常に効果的なのが宮本先生みずからが作成しているパズル。
本書では、伝説の教室で使われている教材、その名も強育パズルを大公開。
強育という言葉には、「子供たちに強く育ってほしい! 」という願いがこめられています。
私の教室では、今回ご紹介する『たし算パズル初級編』を含め、
『たし算パズル初級編』
『たし算パズル中級編』
『たし算 計算ブロック初級編』
『かけ算パズルA初級編』
『かけ算パズルA中級編』
『かけ算計算ブロック初級編』
の計6種の強育パズルシリーズを、小学1~3年生のクラスで取り入れています。
※なお私が使っているのは旧バージョンなので、現在販売されているシリーズとは装丁がちがいます。
今回ご紹介する『たし算パズルA 初級編』のルールは以下のとおり。
たし算パズルのルール
(1)正方形のマスの中に1~9までの数字を入れます。
(2)→または↓からつづくマスの数の和が、数字と等しくなるようにします。
(3)ひと続きのマスの中に同じ数を入れてはいけません。
以下の例題で解き方を見てみると・・・
例題のB列の合計は7ですが、合計が7となる3つの数の組み合わせは【1,2,4】しかありません。
またF列の合計は12ですので、クに1か2を入れるとキが11,12となってしまい、ルール(1)の「1~9までの数字が入る」に当てはまらなくなってしまうため、クに入る数は4→キは8と決まります。
またD列の合計は6ですが、合計が6となる3つの数の組み合わせは【1,2,3】しかありません。
ウに3を入れるとカも3となってしまい、ルール(3)の「ひと続きのマスに同じ数は入らない」に反します。
また上記よりB列のイ・オには1か2が入るため、D列で3が入るのはアのみとなります。ア=3→エ=12-3-8=1と決まります。
すると、ルール(3)よりオに1ははいらないため2が入り、イが1と決まります。
ここまで決まれば、あとはおのずとウ=2,カ=4が決まります。
このように、たし算パズルを解くには
・ある数になる組み合わせを考える
・組み合わせが一つに絞られるところから考えていく
がポイントになりますが・・・
最初はこのレベルからスタートするので、
特に深く考えることなく適当なマスから数字を入れて解きはじめ、合わなくなれば消して違う数字を入れなおして・・・という感じで解けてしまいます。
しかしながら徐々に難易度が上がっていき、最後はこんなレベルまで。
徐々に「ぱっと」解けるというわけにはいかないレベルまで上がっていきます。
『たし算パズル』でやしなわれる力とは
計算力、数の組み合わせの感覚が身につく
この問題集は計算ドリルのように、ただひたすら足し算や引き算を行うものではありませんが・・・
パズルを解く過程で、頭の中で何十回、何百回と足し算・引き算を繰り返す必要があります。
その結果として、
「合わせて6になる3つの数の組み合わせは【1,2,3】だけ」
「合わせて7になる3つの数の組み合わせは【1,2,4】だけ」
など、限られた組み合わせのパターンしかないことに気が付くようになります。
17=8+9、
10=1+2+3+4、
15=1+2+3+4+5
など・・・
つまり、子どもが気づかないうちにたくさんの計算をして、その結果、数の組み合わせ感覚が自然と身についているということになります。
計算問題だけがズラッと並んだ計算ドリルや百ます計算には拒否反応を示す子どもでも、たし算パズルなら、解く過程の面白さや解けたときの達成感が違います。
イヤイヤではなく子どもが自らすすんで楽しく取り組むうちに、計算力を高めることができるのがこのドリルのメリットの1つです。
論理的思考力がやしなわれる
『たしざんパズル』では、はじめのうちは力わざで何度も書いては消して・・・を繰り返して解いていけばOK。
徐々に「どのマスから考えていけばよいか?」など、筋道立てて確実に解く方法を自分で見つけられるようになっていきます。
「各列の合計の数が決まっている」
「各列には1~3(1列5マスなら1~5)の数字が1つずつ入る」
というヒントをもとに、まずは答えが1つに絞られるところを探し、1つのマスが埋まれば他のマスの答えも絞られていきます。
この達成感や充足感が、もっと難しい問題にチャレンジする動機付けとなります。
この繰り返しにより、筋道立てて答えを導き出していく論理的思考力がやしなわれていきます。
試行錯誤力がやしなわれる
最初のうちこそ感覚的にぱっと解けてしまう難易度からスタートしても、徐々に難易度が上がっていき、ひたすら書いては消して・・・の繰り返しが必要になってくるこのドリル。
答えが1つに絞られるマスから埋めていくのが理想的ですが、そのことに気が付かないうちは、可能性のある数字をとりあえず入れてみて、うまくいかなければ他の数字を入れてみる・・・の繰り返しで解いていくことになるでしょう。
それでも「あーでもない、こーでもない」ととにかく手を動かして試行錯誤した結果、問題が解けたときの喜びは大きいもの。
解き方を教えてもらって答えがわかっても、この達成感は得ることができません。
この繰り返しが、算数には必須の「試行錯誤する力」、難しい問題にぶつかってもあきらめない粘り強さにつながります。
『たし算パズル』に取り組むときの注意点
上で述べた『たし算パズル』でやしなわれる力
- 計算力、数の組み合わせの感覚
- 論理的思考力
- 試行錯誤力
これらをしっかりと身につけるために、『たし算パズル』に取り組む際には以下の点に注意が必要です。
やり方を教えない。口出ししない。
たし算パズルを解くには
・ある数になる組み合わせを考える
・組み合わせが一つに絞られるところから考えていく
この2点がポイントとなりますが、それを最初に教えてはいけません。
あくまでも、泥臭いやり方で何度も書いたり消したりを繰り返すうちに、「どうすればスマートに解けるか」に自分で気が付くことが大切です。
おそらく親御さんからしたら、お子さんが問題を解いている姿にイライラして、何かしら口を出したくなることと思いますが・・・
なぜなら、やり方を教えてもらって解いた時と自力で解いた時では、身につく力や味わえる達成感の大きさがまったく違うからです。
ただし、
「正方形のマスの中に1~9までの数字を入れる」
「→または↓からつづくマスの数の和が、数字と等しくなる」
「ひと続きのマスの中に同じ数を入れてはいけない」
といった、問題自体のルールについてはしっかりと理解してから取り組ませるようにしましょう。
途中でやめてもOK
さいしょは特に苦労なくぱっぱっと解けても、解き進めていくうちに問題の難易度が上がり、解くのに時間がかかるように。
そうなると、子どももだんだん集中力が切れてきて、ますます計算ミスが出てきたりしてなかなか解けなくなってきます。
そこで注意が必要なのは、「ここまでやってわからないのだから・・・」と答えを教えてしまったり、逆に、子どもの集中力が完全に切れてしまっているのに解けるまでいつまでもダラダラやらせること。
惰性でやっているような状態になっていたらその日はいったん打ち切って、また翌日以降にあらたな気持ちで取り組ませるようにしましょう。
頭をフル回転させてたし算パズルに取り組んでいる時間そのものが、思考力を伸ばしてくれています。
最後に
『考える力を育てる強育パズル たし算パズル』の著者、宮本哲也さんのお言葉を借りると、
学習はできるから楽しいでのではありません。
楽しく取り組んでいるからできるようになるのです!
もし、お子さんが計算ドリルをイヤイヤやっているようだったら、かわりに『考える力を育てる強育パズル たし算パズル』を取り入れてみてはいかがでしょうか。
なおこちらの記事では、『考える力を育てる強育パズル たし算パズル』の他にも算数的思考力をやしなう小学校低学年向けおすすめのドリル・問題集をご紹介していますので、参考にしてみてくださいね!
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