継次処理・同時処理どっちが得意?チェックテストで認知処理のスタイルを診断。『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』より

ものごとの”わかり方”(認知の仕方)には、「継次処理」スタイルと「同時処理」スタイルの2つのパターンがあり、どちらが得意かによって、効果的な学習の方法が変わってきます。

通常、多少の強弱はあっても「継次処理」「同時処理」がバランスよく発達するため、どちらのスタイルで教えられても理解できないことはありません。

しかし、学習につまずきのある子どもの多くは得意・不得意が極端なため、不得意な認知処理スタイルで教わっても理解がむずかしくなってしまいます。

しかしながら、「うちの子がどっちのタイプなのか、見分け方がわからない・・・」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

書籍『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』は、実際に学校や保育園・幼稚園で指導している先生向けに、子どもの得意な認知処理スタイルを生かした指導の方法の他、得意な認知処理スタイルを知るチェックの方法についても教えてくれています。

今回は本書を参考に、「継次処理」と「同時処理」2つの認知処理スタイルどちらが得意なのか?をチェックする方法についてご紹介していきます。

なお、「継次処理」スタイルと「同時処理」スタイルそれぞれの特徴については、こちらの記事(学習のつまずき解消のヒントをくれる!『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』)でご紹介しています。

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「継次処理」と「同時処理」 学び方の2つのタイプ: 認知処理スタイルを生かして得意な学び方を身につける

子どもの認知スタイルを把握するためのステップ

子どもの得意な認知スタイルが「継次処理」「同時処理」どちらなのか?を見分ける流れは、以下のステップとなります。

保護者自身の認知処理スタイルをチェックする。

子どもの認知処理スタイルをチェックする。

さらに詳しく知りたい場合は
知能検査を実施する。

①保護者の認知処理スタイルチェック表

子どもの認知スタイルをチェックする前に、まずは子どもを指導する立場の先生や保護者が、自身の認知処理スタイルを把握することが大切。
親御さんご自身の傾向を把握することで、自分の得意なやり方でばかりお子さんに接していないか、お子さんの苦手なやり方を強いていないか、日頃のお子さんへの関わり方について振り返ってみることができます。
りんこ
日常生活の各場面を振り返って、A・Bのどちらかというとあてはまるほうにチェックしましょう

■保護者の認知処理スタイル自己チェック表

※表を横方向にスライドできます。

シチュエーション A B
1.道案内 ☐「次の角を右に・・・」「コンビニの角を左に・・・」など、そのつど言葉で説明されたほうが理解しやすい。 ☐道のり全体や、目的地と現在地の関係が、地図上にいつも表示されているほうがわかりやすい。
2.夕飯の買い物 ☐どちらかというと、リストを作って買い物をする。 ☐どちらかというと、品物を見ながら考える。
3.洗濯物の干し方 ☐できるだけ決まった順序で作業を進めたい。 ☐おおまかな手順はあるが、その時に応じて作業を進めたい
4.日常の掃除 ☐どちらかというと、一か所ずつ順番に掃除する。 ☐どちらかというと、気になるところから掃除する。
5.料理 ☐調理を始める前にすべての献立を決め、材料を揃える。 ☐メインの献立の材料が揃ったら、とりあえず調理を始める。
6.家電を買うとき ☐家電量販店で、商品の特徴や使い方などの説明を読んだり聞いたりしたい。 ☐家電量販店で、商品を実際に使っているところを見たり、自分で自由に試したりしたい。
7.家族との会話 ☐その日のできごとを順番に話すことが多く、数字や固有名詞が登場することも多い。 ☐印象的なエピソードを中心に話すことが多く、数字や固有名詞はあまり登場しない。
8.メールや郵便物 ☐順番に一つずつ目を通すことが多い。 ☐関連しそうなものにまとめて目を通すことが多い。
9.お弁当の詰め方 ☐端の方から順番に一つずつ詰めていく。 ☐まんべんなく全体的に詰めていく。
10.組み立て式家具など ☐説明書を読んで、言葉の説明を手がかりに組み立てることが多い。 ☐説明書の図・写真などを見て、完成形を手がかりに組み立てることが多い。

集計の結果、Aが多かった人は「継次処理タイプ」、Bが多かった人は「同時処理タイプ」の傾向があると判断できます。

➁子どもの認知処理スタイルチェック表

お子さんの認知処理スタイルをチェックする方法には、教師・保護者が子どもの行動観察・学習観察を行うものと、子ども自身が記入するアンケート形式のもの(小学校高学年~中学生用)があります。

ここでは、先生や保護者がお子さんの行動を観察してチェックするためのチェック項目をご紹介します。

「継次処理」タイプの子どもの傾向チェックリストと、「同時処理」タイプの子どもの傾向チェックリスト、各12項目のうち☑が多くついた方が、お子さんの認知処理スタイルの傾向であると言えます。

子どもの行動観察によるチェックリスト

■「継次処理」タイプの子どもの傾向チェックリスト

継次処理が強い子どもの傾向
□①自分で手順や順序を考えて作業することができる。
例:九九を順番に覚える、料理の手順やマット運動の身体の動きを自分で考えて活動する。
☐➁説明や手順書を見ながら、順番に作業していくことができる。
 例:説明書どおりにおもちゃを組み立てる。料理の本を見ながら料理する。
☐③情報の順序を思い出すことができる。
 例:朝起きてから学校に来るまでにしたことなど、自分のしたことを正しく順番に思い出せる。
☐④順番に与えられた指示を理解できる。
 例:計算の順序や、跳び箱運動の連続した体の動きを理解できる。
☐⑤聞いたことを順番に正しく繰り返すことができる。
☐⑥言われたことを順番に行うことができる。
 例:「計算ドリルの次に漢字ドリルをして最後に本を読む」などの指示に従うことができる
同時処理が弱い子どもの傾向
☐⑦よく目にする単語を覚えたり、字の形を手がかりとして使えない。
☐⑧単語や文章、段落の意味を解釈することができない。
☐⑨単語の中の音節がわからない。
☐⑩単語を書くときに文字のまとまりとして理解することができない。
☐⑪文章、特に算数・数学の文章題を理解することができない。
☐⑫算数・数学に関する概念や問題のパターン・種類の理解定着が不十分。

■「同時処理」タイプの子どもの傾向チェックリスト

同時処理が強い子どもの傾向
☐①空間を扱う活動が得意
 例:地図を見る、図形の問題を解く等
☐➁ものごとの関連性を理解している
 ※ものごとの似ているところや同じところを見つけて、仲間分けすることが得意
☐③ものごとの全体像を把握することができる
 ※問題を見たり読んだりするとき、その全体像を把握することができる
☐④複雑な言語指示を理解できる
 ※口頭でいろいろな指示をされても、うまく理解できる
☐⑤パターンに従った作業をうまくこなす
 ※お手本があれば、それを見ながらうまく取り組むことができる
☐⑥視覚的教材を使って学習に取り組むことができる
継次処理が弱い子どもの傾向
☐⑦単語を文節に分解するのが苦手で、声に出して読むことができない
☐⑧単語の順序をもとに内容を理解することができない
☐⑨単語を正しく発音することができない
☐⑩単語を書くときに、決まった文字の場所(音が切れるところ)が覚えられない
☐⑪計算をしたり、算数の問題を解いたりするときの手順がわからない
☐⑫読むときに単語、文章、段落の順番に従って読み進められない

子どもの学習場面の観察によるチェックリスト(国語・算数)

■国語における認知処理スタイルの傾向

※表を横方向にスライドできます。

A .継次処理が強く、

同時処理が弱い子の傾向

B .同時処理が強く、

継次処理が弱い子の傾向

言語の習得 ・視覚性言語の習得が困難
・音の把握には抵抗が少ない
・聴覚性言語の習得が困難
・文字の把握には抵抗が少ない
音レベル ・概して発音は正確であるが、文字を形よく構成できない
・文字の読みではあまり困難が見えないことが多い
・書字がへたな場合が多い
・概して音韻分別が弱いため、発音に問題を持つ
・特殊音節の習得も遅い
単語レベル ・文字を読むことはできるが、文字が集まった単語は読めても、意味がわからないことがときどきある ・単語は読めても、1文字1文字に分解すると読めない
文レベル ・文を読むことはうまくできるが、文を書くことはできないことが多い ・文の意味は把握できるが、読むことが苦手で、特に音読することがむずかしい
文章レベル ・文章を読むことはできるが、意味を把握できない。特に物語文の理解は悪く、説明文なら理解することができる ・意味の把握はできる。物語文において感情的な流れを理解することはできるが、説明文などの理解はむずかしい。

■算数における認知処理スタイルの傾向

※表を横方向にスライドできます。

A .継次処理が強く、

同時処理が弱い子の傾向

B .同時処理が強く、

継次処理が弱い子の傾向

数の習得 ・聴覚性言語の習得はスムーズ
・視覚性言語の習得は困難
・視覚性言語の習得はスムーズ
・聴覚性言語の習得は困難
数の変換 ・数唱はスムーズ
・計算をすることは容易
・連続量の理解は容易
・数唱と計算が困難
数概念 ・序数性の理解は容易だが、基数性の理解が困難 ・基数性の理解は容易だが、序数性の理解が困難
計算 ・手続きとしての計算はできる ・計算の内容の把握はできる
文章題 ・立式はでき、手続き的に計算を解くこともできるが、どれくらいの答えになるかを推測することが困難 ・どれくらいの答えになるかを想像することはできるが、立式は困難なことが多い
測定 ・測定の手続きは理解できるが、単位同士の関係が理解できない ・単位同士の関係がわかり目盛りも読めるが、測定の手続きが正確に踏めない
表とグラフ ・表やグラフを読んだり、利用することが困難。図形の構造を理解することができない。 ・表やグラフを読むことはできるが、実際に図形を正確にかくときに、道具を適切に使ってかくことの困難さが目立つ場合がある
図形 ・正しく図形をかく手続きは理解できる。 ・図形の移動の弁別は、見るとすぐにできるが、実際にかくことができにくい

上記のチェックリストからお子さんの認知処理スタイルの傾向がわかれば、得意な認知処理スタイルを生かした指導や学習の方法を試してみることで、学習の効果アップが期待できます。

なお、「継次処理タイプ」「同時処理タイプ」それぞれの認知スタイルを生かした学習指導方法のヒントは、こちらの記事にて紹介しています。

※関連記事:学習のつまずき解消のヒントをくれる!『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』

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③知能検査(KABC-Ⅱ)を実施する。

上でご紹介したチェック表を用いて、お子さんの認知処理スタイルの大まかな傾向を把握した上で、科学的な根拠にもとづいて認知スタイルの傾向を数値化する知能検査により、さらに詳しく正確に、支援・指導の手立てを得ることができます。

WISC-Ⅳと並ぶ代表的な知能検査ツール「KABC-Ⅱ」は、「継次処理」と「同時処理」どちらが得意か?といった認知処理スタイルの傾向(認知尺度)に加えて、知能検査では唯一、基礎学力を計る学習習得度の評価も取り入れられています。

読み・書き・算数や語彙の学習習熟度(学習尺度)を測定することで、お子さんが何年生レベルの学力を持っているかを知り、具体的な学習支援に繋げることを目的としています。

KABC-Ⅱでわかること。検査内容(尺度)と検査項目について

りんこ
KABC-Ⅱの検査内容は以下のとおり。

■KABC-Ⅱの検査内容(尺度)

【認知尺度】 ・情報を受け取って、覚えたり考えたりする力
・新しい場面や初めての問題を解決する力
・継次尺度 ・順番に連続して入ってくる情報を受け取って、覚えたり考えたりする力
・ものごとを順序立てて覚えたり、考えたりする力
・同時尺度 ・入ってきたいくつかの情報同士の関係をもとに、考えたり覚えたりする力
・ものごとを全体的にまとめて理解したり、考えたりする力
・学習尺度 ・目や耳から入ってきた情報を持続して覚えておき、しばらくしてから思い出す力
・計画尺度 ・課題解決の仕方を決めたり、途中で柔軟に修正したり、見直したりする力
【習得尺度】 ・これまで学校や家庭などで身につけてきた力
・知識や言葉の力、教科の学習に関する技術
・語彙尺度 ・文字や言葉の読み
・文章の理解
・読み尺度 ・言葉の意味理解
・言葉による表現力
・書き尺度 ・文字や漢字の書き
・文を作成する力
・算数尺度 ・計算力
・数を扱う推理力
りんこ
それぞれの尺度における検査項目は以下のとおり。
継次尺度(短期記憶尺度)
・数唱 口頭で言われた一連の数字を、同じ順序で復唱する。
・語の配列  影絵で示された中から、いくつかの物の名前を言われた順序のとおりに指さす。
・手の動作 一連の動作で見せられた手の動作を、同じ順序で繰り返す。
同時尺度(視覚処理尺度)
・顔さがし 1人または2人の顔写真を見て、次のページの写真の中から見つける。
・絵の統合 部分的に欠けている影絵を見て、それが何かを答える。
・近道さがし 16分割、25分割、36分割された庭の図版上で、最短ルートを見つける。
・模様の構成 大きさや色・形の異なるピースを用いて見本と同じ模様をつくる。
計画尺度(流動性推理尺度)
・物語の完成 一連の絵の空欄に入る絵カードを選んで、物語を完成させる。
・パターン推理  ある規則に従って並んでいる数個の絵(図形)の空欄に当てはまるものを選択肢の中から選ぶ。
学習尺度(長期記憶と検索尺度)
・語の学習 無意味な名前がつけられた架空の絵を見て、次のページの一連の絵の中から、言われた名前の絵を指さす。
・語の学習遅延  [語の学習]を終了し、一定時間後に、[語の学習]で覚えた名前の絵を指さす。
語彙尺度(結晶性能力尺度)
・表現語彙 絵や写真を見て名前を答える。
・なぞなぞ なぞなぞを聞き、答えの絵を指さすか単語で答える。
・理解語彙  読み上げられた単語が示す絵を指さす。
算数尺度(量的知識尺度)
・数的推論 絵を見ながら問題文を聞いて、それに答える。
・計算 計算問題を解く。
読み尺度 および 書き尺度(読み書き尺度)
・ことばの読み 提示されたひらがな、カタカナ、漢字を声に出して読む。
・ことばの書き ひらがな、カタカナ、漢字を書く。
・文の理解  動作を指示する問題文を見て答えたり、その通りの動作を行う。
・文の構成 示されたことばを使って文をつくる。

上記のとおり、KABC-Ⅱでは、認知処理過程(継次処理・同時処理、学習能力、計画能力)と知識・技能の習得度(語彙、読み、書き、算数・数学)の両面から評価して、子どもの得意な認知処理スタイルを見つけるとともに、基礎学力につまずきがあるかどうかを測定します。

すなわちKABC-Ⅱを受けることで、お子さんの認知処理スタイルに適した学習方法を知り、最小限のストレスで学力を伸ばすことが可能になります。

勉強嫌いの小学生におすすめの教材として別の記事でご紹介しているオンライン学習『すらら』では、2歳6ヶ月~19歳未満のお子さんを対象に「KABC-Ⅱ」の検査を受け付けていますので、ご興味のある方は一度チェックしてみてはいかがでしょうか。(参照:https://surala.jp/assessment/kabc2/lp/)

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※関連記事:学習のつまずき解消のヒントをくれる!『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』

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