「ウチの子は記憶力がなくて…」
「勉強してもなかなか覚えられない」
「一度覚えても、すぐに忘れてしまう…」
・・・こんなお悩みはありませんか?
あらゆる学習の場面に限らず、生きていく上で「記憶力」は必須。
お子さんの記憶力をアップさせたい、と思わない親御さんはいらっしゃらないと思います。
もしお子さんが、
✔記憶力が弱い
✔なかなか覚えられない
✔覚えてもすぐに忘れてしまう
…という場合、もしかしから「記憶のやり方」に問題があるかもしれません。
今回は、認知心理学で証明されている事実を踏まえて、「学習した内容を覚えやすくする」「一度覚えた内容を忘れにくくする」ための方法についてご紹介します。
記憶の2つの種類
短期記憶と長期記憶
私たちの記憶は、大きく「短期記憶」と「長期記憶」に分けて考えられます。
<短期記憶>
・数秒から数十秒程度のあいだ情報を一時的に保持するもの
・容量が小さく、時間がたつとすぐに消えてしまう
例: 電話番号を聞いてかけるまでの間は覚えているが、かけ終わるとすぐに忘れる など
<長期記憶>
・長期間にわたって情報を保存するもの
・繰り返し使ったり、印象が強い記憶が長い間保存される
(何度も使っている記憶や体で覚えたスキル、感情が動いた出来事など)
・容量はほぼ無限と言われている
例:自分の住所や誕生日、自転車の乗り方、子供の頃の思い出など
短期記憶と長期記憶では、その特徴やシステムが異なります。
短期記憶に入った情報のうち、繰り返し使われたり意味づけされたものが長期記憶へと移行すると考えられています。
短期記憶の容量は非常に小さく、逆に長期記憶の容量は膨大。
「自分はもの覚えが悪い」と思っている人も、 長期記憶の容量が不足しているということはありません。
つまり「覚えられない=能力が低い」ではなく、「長期記憶にうまく移せていないだけ」と捉えることができます。
重要なのは、いかにうまく情報を長期記憶に定着させるかと、長期記憶にある情報をいかに うまく取り出すことができるかということになります。
ワーキングメモリとは
ワーキングメモリとは、情報を一時的に保持しながら同時に処理する力のことで、「作業記憶」とも呼ばれます。
短期記憶が情報をストックする「容量」そのものを指すことが多いのに対し、ワーキングメモリは、短期記憶として保持している情報を活用して考えたり判断するなど、何かを成し遂げる「処理能力」を含んだ概念。
ワーキングメモリの力が弱いと、話を最後まで覚えられなかったり、途中で何をしていたか分からなくなることがあります。
逆にワーキングメモリーを意識した学習や遊びを取り入れることで、学習全体の理解力や効率を高めることができます。
※関連記事>>>ワ-キングメモリが弱い子どもの学習支援『ワーキングメモリと特別な支援』
ワーキングメモリの大きさが学習に及ぼす影響は大きく、知能よりもむしろワーキングメモリのほうが影響があることが知られています。 『ワーキングメモリと特別な支援』は、日本の学校現場での実践をふまえて、ワーキングメモリの知見を個別指導・学級[…]
認知心理学を活かして学習場面で記憶力を高める方法3つ
①「情報のチャンク化」で短期記憶の負担を減らす
上で述べた通り短期記憶には容量の限界があり、一度に保持できる情報量はそれほど多くありません。
そのため、情報をバラバラに覚えようとするとすぐにあふれてしまいます。
そこで重要になるのが「チャンク化」という考え方。
「情報のチャンク化」とは、複数の情報を意味のある”まとまり”として捉えることで、記憶の効率を高める方法。
ランダムな数字の列を耳で聞いてすぐに復唱する場合、 一般には5~9個、 だいたい7個くらいが可能と言われています。
また数字の代わりに文字(ひらがな)で行っても、覚えられるのはやはり7文字程度です。
しかしながら、文字ではなく単語を覚える場合でも7語を記憶することが可能。2文字の単語 なら14文字を記憶していることになります。
つまり短期記憶の容量は、 情報の ひとまとまりを一つの項目として 7項目であるということ。
すなわち、情報をバラバラのままでなく「かたまり」としてまとめることで、たくさんの情報量を効率よく記憶できる、ということが言えます。
*電話番号やマイナンバーなど(数列)
数字の列を覚える場合、ハイフンがあるかないかで覚えやすさが劇的に変わります。
・バラバラ:09012345678(11個の情報)
・チャンク化:090 – 1234 – 5678(3つの塊)
👉覚える情報量を11個から3個に減らせる
*無意味な文字列と、意味のある言葉
アルファベットの羅列も、知っている単語(文字のかたまり=チャンク)に変換すると一瞬で記憶できます。
・バラバラ: P, E, P, L, A, N(6つの独立した文字)
・チャンク化::APPLE(「りんご」という1つの概念)
※「APPLE, ORANGE, BANANA」なら、17文字⇒3単語⇒「フルーツ」という1つの大きなチャンクとして処理できます。
学習場面においても、数や言葉を単独で覚えるのではなく関連づけてまとまりとして捉えることで、短期記憶の負担を減らすことが可能になります。
➁リハーサル(くりかえし学習)で長期記憶に定着させる
記憶の「リハーサル」とは、情報を忘れないように、あるいは長期記憶に定着させるため頭の中で何度も繰り返すこと。
短期記憶の容量は限られており、何もしないと数十秒で消えてしまいますが、リハーサルを行うことで短期記憶から長期記憶に転送され、その情報を引き留めておくことが可能になります。
しかしながら単純に頭の中で繰り返すだけでは長期記憶に情報を定着させるのに十分ではないということがわかっています。
維持リハーサル
・情報をそのままの形で、口に出したり頭の中で唱えたりして繰り返す方法
・ 短期記憶の中に情報を「とどめておく」ためのもの。
・やめるとすぐに忘れてしまうことが多い。
<維持リハーサルの例>
・電話番号をメモするまで「090…090…」と何度も唱える。
・買い物リストを「卵、牛乳、パン…」と念仏のように繰り返す。
👉維持リハーサル=忘れないように「キープ」する(短期的な維持)方法
精緻化(せいちか)リハーサル
・情報に意味付けをしたり、すでに知っている知識と結びつけたりして意味を深める方法
<精緻化リハーサルの例>
・ 語呂合わせ::「1192(いい国)作ろう鎌倉幕府」のように数字に意味を持たせる。
・ 関連付け::新しく会った人の名前を、同じ名前の知人と関連付けて覚える。
・イメージ化::単語だけでなく、その状況を映像として頭に浮かべる。
👉精緻化リハーサル = 忘れないように「加工」する(長期的な保存)方法
何かをしっかり覚えたいときは、ただ繰り返すだけの維持リハーサルよりも、「これってどういう意味?」「自分の知っているあれと似ているな」と考える精緻化リハーサルの方が圧倒的に効果的。
子どもの学習場面においても、同じことを何度も書くなど単なるくり返しではなく、工夫したリハーサル(精緻化リハーサル)で学習内容を長期記憶として定着させることが重要になります。
意味付け(「なぜ?」や「ストーリー」を加える)
情報に「理屈」や「背景」というラベルを貼ることで、単なる記号や数字を「意味のある情報」に変える方法。
* 理科、社会: 「鳴かぬなら ‥‥ホトトギス」の俳句で戦国武将の性格を覚えるように、背景にあるエピソードや理由をセットにする。
* 漢字: 「休」という字を「人が木のかたわらで休んでいる」と、文字の成り立ち(意味)で覚える。
イメージ化(頭の中に「絵」や「映像」を浮かべる)
文字情報を「映像」という別のデータ形式に変換する方法。
言葉を映像に変換すると、脳は情報を処理しやすくなります。
* 算数の文章題: りんごが3個、みかんが5個……という状況を、実際に果物がカゴに入っている様子を頭の中でカラーで想像する。
* 記憶の宮殿(メモリーパレス): 馴染みのある場所(自宅や通学路など)を頭の中に思い浮かべ、そこに覚えたい情報をイメージとして配置する記憶法。 思い出すときは、その場所を歩くようにイメージし、配置した情報を拾い上げていく。
関連付け(「知っていること」と結びつける)
新しい知識をバラバラに覚えるのではなく、すでに持っている知識や経験、あるいは同時に覚える他の情報と結びつけることで、脳内の「記憶のネットワーク」を強化するテクニック。
1. 既存の知識と結びつける(既知への関連付け)
新しい情報を、自分がすでによく知っていることに「例え」たり「比較」したりします。
例: 新しく習った歴史上の人物を、知っている現代の政治家やアニメのキャラクターの性格に当てはめて覚える。
2. 「自分」や「体験」に関連付ける(自己関連付け効果)
情報を自分自身の経験や感情と結びつけると、格段に忘れにくくなります。
例: 特産品を覚える際、「旅行で行ったときに食べたあの料理」という記憶と結びつける。
3. ストーリーやイメージを作る(リンク法・ストーリー法)
無機質な情報の羅列を、一つの物語(ストーリー)にしてつなげます。
例: 「りんご、カバン、雨」という単語を、「りんごが詰まったカバンを抱えて歩いていたら、雨が降ってきた」という映像として思い浮かべる。
※関連記事>>>「リンク法記憶」トレーニングで記憶力やイメージ力を高める!
4. 体系的なマップを作る(コンセプトマップ)
中心となるテーマから、関連するキーワードを枝分かれさせて視覚的に整理します。
例:「なつの やさい」:中心に「なつの やさい」と書き、そこから「色」や「形」などの切り口で枝を広げていきます。

③復習タイミングを意識して忘れにくくする
記憶のもう一つの重要な側面は、「忘れる( 忘却)」ということ。
ドイツの心理学者エビングハウスは、意味のないランダムな綴りの単語を記憶する実験をとおして、人間の「記憶」や「忘却」を科学的に証明しました。
エビングハウスの忘却曲線
記憶の保持率と時間の経過関係をグラフ化したもの。
無意味な単語13のリストを繰り返し暗記し、1つの誤りもなく言えるようになるまで学習した後、20分から31日間までさまざまな間隔をおいて、再び完全に覚えるまでどれくらい学習しなければならないか(=再学習のしやすさ・・・最初に暗記したことをどのくらい覚えているかの指標)を調べました。
その結果、最初の数時間で特に忘れ方が激しく その後は次第に忘れ方が緩やかになることがわかりました。
* 20分後には、約42%を忘れる。
* 1時間後には、約56%を忘れる。
* 1日後には、約74%を忘れる。
* 1週間後には、約77%を忘れる。
つまり、一度全部暗記してもそのまま放っておくと大半は忘れてしまいます。
エビングハウスの忘却曲線からわかることは、
✔覚えても一気に忘れる
覚えた直後が一番忘れやすい→「鉄は熱いうちに打て」の通り、すぐに復習するのが最も効率的。
✔忘れるスピードは緩やかになる
1日後から1週間後の差はわずか数%。つまり、「最初の1日」を乗り切れば記憶は残りやすくなる。
✔復習すると忘却曲線はゆるやかに
何もしないと急降下する曲線ですが、適切なタイミングで復習をすると、曲線の傾きがどんどん「ゆるやか」に。
→記憶は時間が経つにつれて自然に薄れていき「時間が経つほど、情報を覚え直すのに必要な手間が増える」。
一度にまとめて学習するよりも、時間をあけて何度か思い出す方が効果的であることが分かっています。
例えば、学習したその日のうちに軽く振り返り、翌日や数日後にも再度確認することで、記憶は長期的に定着しやすくなります。
また「思い出す」こと自体が記憶を強化するため、答えを見る前に考える時間を作ることもポイントです。
* 2回目の復習: 次に忘れるまでのスピードが遅くなる。
* 3回目の復習: さらに忘れにくくなり、やがて「長期記憶(一生忘れない知識)」に変わる。
まとめ
👉記憶には2種類ある(短期記憶と長期記憶)
・短期記憶の容量は非常に小さく、逆に長期記憶の容量は膨大。
・短期記憶に入った情報のうち、繰り返し使われたり意味づけされたものが長期記憶へと移行する。
・情報を長期記憶に定着させること、長期記憶にある情報をうまく取り出すことが重要。
👉 認知心理学を活かして学習場面で記憶力を高める方法
①「情報のチャンク化」で短期記憶の負担を減らす
情報をバラバラのままでなく「かたまり」としてまとめることで、たくさんの情報量を効率よく記憶できる
➁リハーサル(くりかえし学習)で長期記憶に定着させる
1 意味付け(「なぜ?」や「ストーリー」を加える)
2 イメージ化(頭の中に「絵」や「映像」を浮かべる)
3 関連付け(「知っていること」と結びつける)
③復習タイミングを意識して忘れにくくする
学習したその日のうちに軽く振り返り、翌日や数日後にも再度確認することで、記憶は長期的に定着しやすくなる。

