『遊び活用型 読み書き支援プログラム』は、読み書きや文章読解に困難を抱える子どもたちの学習支援方法を提案するガイドブック。
✅ひらがなや漢字の読み書きが苦手
✅単語や文の意味が理解できない
✅文字の形の区別が苦手
✅特殊音節の読み書きが苦手
・・・といったお子さんを対象に、特に学習障害(LD)のある児童への支援に焦点を当て、特別支援教育に携わる教師や支援スタッフ、保護者にとって実践的で効果的な内容となっています。
本書では、学習障害の定義や読み書き障害の背景などについて詳しく解説されている他、小集団での活動を通じて行う「遊び活用型」支援プログラムを紹介。
本書を購入すると、本書で紹介されている学習支援に使用できる100種類以上のPDF教材を出版社のサポートページ(https://www.toshobunka.co.jp/books/yomikaki/yomikaki.php)からダウンロードすることができるので、効果的な学習支援が即実行可能。
※ダウンロードには書籍の特定ページに記載されたパスワードが必要です。
本書で紹介されている「遊び活用型」支援プログラムは、数人の小集団での活動を通じて行うことが前提となっていますが、これらの中から家庭でも実践しやすいプログラムをピックアップし、親御さんとお子さんの2人で行うかたちにアレンジしてみました。
今回の記事では、その中で、ひらがな(文字)の読み書きに関するプログラム(形の識別、音韻分解、清音・濁音の読み書き)をご紹介します。
なお本書に紹介されているプログラムでは、上述したPDF教材をダウンロードして使うのが前提となっていますが、こちらの記事でご紹介する取り組みでは、手持ちのひらがなカードや絵カードを使用したり、手書きのものを作成してできるものが中心ですので、ご家庭での取り組みの参考にしてみていただければと思います。
遊び活用型読み書き支援プログラム 学習評価と教材作成ソフトに基づく統合的支援の展開 (教室で行う特別支援教育) [ 小池敏英 ]
ひらがな「読み」の取り組み
ひらがな文字キャッチ(文字の形の識別)
たくさんのひらがなの中から目的の文字をすばやく見つける取り組みです。
「ひらがな文字キャッチ」取り組みのねらい
・ひらがなの文字の形を正しく区別して読むことができるようになる
・同じ形のひらがな文字を見つけることができる
「ひらがな文字キャッチ」準備指導
・イラストを見て、その名前を言うことができることを確認しましょう。
・文字形イラストカードを使って、ひらがなの読みを促進しましょう。
<準備指導のやり方>
①単語を言い、それに対応する文字形イラストカードを取らせる。
例:「『いぬ』はどれ?
➁ひらがな単語を見せ、対応する文字形イラストカードを取って読みを言わせる。
例:『いぬ』と書かれたカードを見せ、「これはどれ?」
③ひらがなを見せ、対応する文字形イラストカードを取って読みを言わせる。
例:『い』と書かれたカードを見せ、「これはどれ?」
④ひらがなを見せ、対応する読みを言わせる。
例:『い』と書かれたカードを見せ、「これはなに?」
「ひらがな文字キャッチ」取り組み方
<用意するもの>
・問題となるイラストカード
・問題に書かれたものの名前の文字を含んだひらがなカード単音(1文字ずつ書かれたもの)
<取り組み方>
①複数のひらがなカード(10枚程度)を机の上にばらばらに置く。
その中に、問題の解答となるひらがなカードを入れる。
➁イラストカード(問題)を提示し、複数のひらがなカードの中から絵に合うものを探させる。
音記号で組み立てよう(特殊音節の読み)
「特殊音節」とは、日本語の音のまとまり(音節)の中で特別な性質を持つもののことをいいます。
【普通の音節】
たとえば、「た」「か」「み」などは母音(あ・い・う・え・お)を含むふつうの音節で、1文字=1音節です。
【特殊音節】
以下のような音は、1文字で1音節扱いになるけれど、母音を持っていないなど、特殊な性質があります。
・ 促音(そくおん)/つまる音(小さい「っ」)
例:がっこう(学校)
一瞬息を止めて音をつなげる役割を持ちます。
音としては「休止」のような感じですが、1音節として数えます。
・ 撥音(はつおん)/「ん」
例:ほん(本)、さんぽ(散歩)
「m」「n」「ng」のような鼻の音。
これも1音節と数えられます。
・ 長音(ちょうおん)/伸ばす音(「ー」)
例:コーヒー、おばあさん
母音を長く伸ばして発音する音を表す「ー」や、母音を伸ばして発音する部分も1音節。
この取り組みでは、特殊音節が読めない、「しゃ」と「しや」を区別できないなど特殊音節の読みに困難がある場合に、●や□の音記号を使って、文字と音の対応を学びます。
「音記号で組み立てよう」取り組みのねらい
音記号カードを用いて単語を組み立てる取組をとおして音韻意識を促し、ひらがなの特殊音節の読みが理解できるようにする
「音記号で組み立てよう」準備指導
音記号カードを用いて、特殊音節と文字の対応を確認しましょう。
①「しんじゅ」や「しっぽ」など特殊音節を含むものが描かれたイラストを見て、その名前を言うことができることを確認する。
➁特殊音節と音記号カードとの対応関係について説明する。(●は清音・濁音・半濁音、●●は拗音、▲は撥音、□は促音)
例:しっぽ
例;しんじゅ
「音記号で組み立てよう」取り組み方
<用意するもの>
・イラストカード
・音記号カード
<取り組み方>
①問題となるイラストカードを子どもに見せ、名前を言わせる。
➁イラストの名前になるよう音記号カードを並べさせる。
③並べた音記号カードの中から一枚を指し、「このカードは何ですか?」と聞いて音を言わせる。
カードでつなげよう(清音・濁音の読み)
自分の手持ちのカードから1つひらがなを足して、言葉を作ります。
「カードでつなげよう」取り組みのねらい
ひらがな単語をまとまりとして読むことができるようにする。語彙を広げる。
「カードでつなげよう」準備指導
ひらがなカード(単音)を組み合わせて単語を作ったものを見せ、1文字ずつ正しく読めることを確認しましょう。
「カードでつなげよう」取り組み方
<用意するもの>
・ひらがなカード(単語)
・ひらがなカード(単音)
<取り組み方>
STEP1:カードしりとり
あらかじめ、しりとりでつながるひらがなカード(単語)を複数枚選んでおく。
しりとりのスタートとなるひらがな(単語)カード1枚を置き、残りのカードをしりとりでつながるよう並べさせる。
STEP2:ひらがなカード(単音)でつなげよう
①ひらがなカード(単音)を、指導者と子どもで同じ枚数ずつ分ける。
②残りのカードをよく混ぜて、裏返して山にする。
③山札から1枚取って場の真ん中に置く。
④順番に、場にあるカードの前や後に手持ちのカードを1枚置いて言葉を作る。
出せるカードがないときは、山札からカードを1枚取る。
それでも言葉を作れない場合はパスする。
⑤手持ちのカードをすべて出し終えた人の勝ち。
※ひらがな文字の読みに困難が見られる場合は、その子が簡単に読めるひらがなや、身近な言葉ができるカードに絞って行い、慣れてきたら徐々に用いるカードの数を増やしていきましょう。
もしくは、手持ちのカードの中から場に出せるものを指導者が1枚選んで取り出し、どこにカードを置けば言葉ができるかを子どもに考えさせましょう。
ひらがな「書き」の取り組み
ぐるぐる文字探し(文字の形の識別)
回転した文字を手がかりに、ひらがなを正しく書く取り組みです。
「ぐるぐる文字さがし」取り組みのねらい
・ひらがな文字の形を正確に区別できるようになる
・ひらがな文字を正しく書けるようになる
「ぐるぐる文字探し」準備指導
文字形イラストを使って、ひらがなの書きを促進しましょう。
学習したいひらがなの文字形イラストカードとイラストカードを用意する。
①文字形イラストカードを見て、絵に合うひらがな文字を書かせる。(絵+文字→文字書き)
➁イラストカードを見て、絵に合うひらがな文字を書かせる。(絵→文字書き)
③「いぬの『い』」などのキーワードを声に出して言い、音に合うひらがな文字を書かせる。(音のみ→文字書き)
「ぐるぐる文字さがし」取り組み方
<用意するもの>
・ひらがなカード(単音)
・解答用紙
<取り組み方>
①ひらがなカード複数枚をいろいろな角度で机の上に置く。
➁カードの向きを変えないで、どんなひらがながあるのかを探し解答用紙に書かせる。
③書けたら、文字を正しい角度に回して読ませる。
※書字に困難がある子の場合は、ひらがなを正しく弁別できたら(例:「め」を見つけて指さし「め」と言えたら)ひらがなカードを正しい角度に直し、それを見ながら書かせましょう。
※1回で用いるひらがなカードは、「よく似ている文字」「よく間違える文字」「最近学習した文字」「鏡文字」などさまざまなテーマで行いましょう。
音記号で書こう(特殊音節の書き)
単語の読みと音記号が対応できるようになったら、音記号カードを手がかりに「書字」の学習を行います。
「音記号で書こう」取り組みのねらい
音記号を手がかりに、特殊音節を含む単語を正しく書けるようにする。
「音記号で書こう」準備指導
音記号カードを用いて、特殊音節と文字の対応を確認しましょう。
①イラストを見て、その名前を言うことができることを確認する。
➁特殊音節と音記号カードとの対応関係を確認する。
「音記号で書こう」取り組み方
<用意するもの>
・イラストカード
・音記号カード(単音)
・音記号カード(単語)
<取り組み方>
STEP1:早く取ろう
①音記号カード(単語)を並べる。
➁指導者がイラストカードの山から1枚取って「この絵は何ですか?」と発問する。
③子どもは、イラストの名前に合う音記号カードを取り、その名前を言う。
STEP2:書いてみよう
①子どもに音記号カード(単音)と解答用紙を渡す。
➁指導者がイラストカードの山の中から1枚取って、子どもに見せる。
③子どもは、イラストの名前になるよう音記号カードを並べ、それを手がかりに解答用紙にひらがなで書く。
※子どもが並べたカードの中の1枚を指して、「『きゅ』はどれ?」などと発問してみましょう。
※特殊音節の書字に困難がある場合は、イラストの絵に合う音記号カード(単語)を選ばせた後、ひらがなカード(文字)を組み合わせて絵に合う名前の単語を作らせましょう。
虫食いクイズ(ひらがなの書き)
文字の一部を手掛かりに、ひらがなを正しく書く取組。
隠れた部分に注目することで、文字の細部に目を向けるよう促します。
「虫食いクイズ」取り組みのねらい
間違えやすい部分を意識しながら、ひらがなを正しく書けるようにする。
「虫食いクイズ」準備指導
ひらなカード(単音)を組み合わせて単語を作り、1文字ずつ正しく読めることを確認しましょう。
「虫食いクイズ」取り組み方
<用意するもの>
・ひらがなカード(単音)
・おはじきや●シールなど、文字の一部を隠すもの
・解答用紙
<取り組み方>
①2~4枚のひらがなカードを組み合わせて単語を作り、文字の一部をおはじきや●シールなどで隠し問題を作成する。
➁子どもは、問題の言葉を解答用紙に書く。
③おはじきやシールを外して正解を見せ、子どもが書いた字と見比べて正しいかどうかを判断させる。
必要に応じて、「ここは丸だったかな?」「『ほ』は横線2本だよね」など、ポイントを言葉で確認しましょう。
同様にカタカナや漢字でも取り組むこともできます。
『”遊び活用型”読み書き支援プログラム』その他の取り組み
書籍『”遊び活用型”読み書き支援プログラム』には、上でご紹介した「ひらがな(文字)の読み書き」のプログラム以外にも
- ひらがな(単語)の読み書き
- 短い文の読解
- 長い文の読解
- 漢字(1・2年生)の読み書き
- 漢字(3年生以上)の読み書き
これらのプログラムが紹介されており、プログラムで使用する教材はすべて、出版社のサポートページ(https://www.toshobunka.co.jp/books/yomikaki/yomikaki.php)からダウンロードすることができます。
※ダウンロードには書籍の特定ページに記載されたパスワードが必要です。
ご興味のある方は、いちど本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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『まるぐランド for HOME』の特徴
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