2年生の算数の最重要ポイントといえば、『九九』。
この先の計算学習すべてに九九が絡んできますので、2年生で完全にマスターしておく必要があります。
しかしながら、
「ウチの子はなかなか九九を覚えられない・・・」
とお悩みの親御さんも多いのではないでしょうか?
実際、私の教室の生徒さんでも、
✅3年生になってもなかなか九九をぱっと言えない
✅7×9を、「しちいちがしち、しちにじゅうし・・・」と最初から唱えないと答えられない
など、九九の暗記に苦労しているお子さんは少なくありません。
通常では九九の表を貼ったり、計算カードを用いて覚えるケースが多いと思いますが、その覚え方は、もしかしたらお子さんに合っていないのかもしれません。
子どもが学習する際の、ものごとの「わかり方(認知の仕方)」には2つのパターンがあり、「継次処理」と「同時処理」どちらのスタイルが得意かによって、効果的な学習の方法が変わってきます。(※関連記事:学習のつまずき解消のヒントをくれる!『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』)
通常、多くの子どもは、多少の強弱はあっても2つの認知処理スタイルがバランスよく発達するため、どちらの認知処理スタイルで教えられても理解できないことはありません。
しかしながら、学習につまずきのある子どもの多くは得意・不得意が極端なため、不得意な認知処理スタイルで教わっても理解がむずかしく、「いくら学習してもなかなか覚えられない」ということが起こってしまいます。
そこで今回こちらの記事では、書籍『通常学級で役立つ算数障害の理解と指導法』を参考に、お子さんの得意な認知処理スタイル別「かけ算九九の覚え方」についてご紹介します。
なお『通常学級で役立つ算数障害の理解と指導法』は、学習障害の中の算数障害について、その指導ノウハウを通常学級の指導に取り入れる方法などを紹介している本。
通常学級で役立つ 算数障害の理解と指導法 みんなをつまずかせない! すぐに使える! アイディア48
学習障害児がつまずきやすい算数概念や学習は健常児もつまずきやすく、学習障害児にわかりやすい指導は健常児にとってもわかりやすい。
すなわち本書は、算数につまずきのあるすべての子どもにとって参考になる書籍ですので、気になる方はぜひ一度手に取ってみていただければと思います。
得意な認知処理スタイル別「九九」の覚え方
上で述べた通り、お子さんの得意な認知処理スタイルが「継次処理」か「同時処理」かによって、効果的な九九の学習方法は違います。
まずは「継次処理」スタイルと「同時処理」スタイルについて、簡単にまとめてみます。
一つ一つの情報を時間的な順序で処理していくのが得意。そのため、学習するときには始めから順序だてて行うことを好みます。✅情報を一つ一つ順番に理解し、それらをつないで全体を捉えることが得意(部分→全体へ)✅聴覚からの情報収集・理解(聞くこと)が得意
複数の情報をその関連性に着目して全体的に処理するのが特徴。そのため継次処理スタイルとは反対に、「全体から部分へ」という方向を踏まえます。✅物事の全体像をイメージし、情報と情報の関係を把握していくことが得意(全体→部分へ)✅視覚からの情報収集・理解(見ること)が得意
なお、お子さんがどちらのタイプかわからない・・・という場合は、チェックする方法をこちらの記事(継次処理・同時処理どっちが得意?チェックテストで認知処理のスタイルを診断。『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』より)で紹介していますので、宜しければ参考にしてみてくださいね。
ものごとの”わかり方”(認知の仕方)には、「継次処理」スタイルと「同時処理」スタイルの2つのパターンがあり、どちらが得意かによって、効果的な学習の方法が変わってきます。 通常、多少の強弱はあっても「継次処理」「同時処理」がバランスよく[…]
「聞くこと」が得意な子・・・継次処理スタイルの九九学習法
【ねらい】九九を正確に唱え、かけ算の計算ができるようになる。
【内容】九九の言い方を文章化したり、音で聞かせ、音によって覚えさせる。
【準備するもの】かけ算の計算式カード(かけ算の式と、その読み方がひらがなで読みが書いてあるもの)81枚
<取り組み方>
①1の段から九九を音で覚える
・かけ算の計算式カード(かけ算の式と、その読み方がひらがなで読みが書いてあるもの)を用いて1の段から音読し、九九を覚えます。
・ひととおり終わったら、「いんいちが?」「いんにが?」などと問題を出し、答えられるようにします。
・1の段が終わったら、2の段、3の段・・・の順番で同様に九九を覚えます。
②式の意味を理解する
・計算式カードを見ながら、数字を「言語化カード」に当てはめて読ませます。
計算式カード
7×3=21
⇒7が3こで21になる
③具体的な場面に当てはめ問題文づくりをする
「言語化カード」を見ながらお話を作り、九九の意味的な理解を促します。
「『7が3こで21になる』からお話を作りましょう」
例:
ともだちが7人ずつ3列で席に座りました。全部で何人いますか?
あめが7個ずつ入った袋が3袋あります。全部で何個ありますか?
継次処理タイプの子には、かけ算の意味を理解することから入らずに音として覚えることを優先させましょう。
その後九九を覚えて言えるようになったら、語呂や音のパターン化などに注意した上で意味を教えるのが有効です。
また「聞くこと」(耳からの記憶)が得意な子には、九九を歌で覚えるのも有効。
Youtubeで「九九の歌」と検索するとたくさんの九九ソングが出てきますので、お子さんの好みに合うものを一緒に探してみましょう。
九九の歌のCDをかけ流しておくのもおすすめです。
☆七田式(しちだ)CD教材☆ かけざん九九のうた(しちだっくver.)☆★
「見ること」が得意な子・・・同時処理スタイルの九九学習法
【ねらい】九九を正確に覚え、かけ算の計算ができるようになる。
【内容】九九の表により、空間的な位置関係から答えを導き出す。
【準備するもの】九九の表、かけ算カード81枚、かけ算カードを貼る紙、絵カード
<取り組み方>
①九九の表の特徴を探す。
☆七田式(しちだ)教材☆ かけざん九九チャート(しちだっくver.) ☆お風呂に貼れる(防水紙)☆☆ ★
九九の表を見せて、「どんな数字がどういう位置にあるのかな?」などと尋ねながら、表の中の数字や式を当てさせます。
※子どもから答えが返ってこない場合は、「上の列はどうなっている?」「下の列はどうなっている?」など、空間の配置に注目させます。
②九九の表を作成する。
かけ算カード81枚をどうやって並べたら九九の表ができるのか、モデルとなる九九の表を見ながら、カードを並べて九九の表を作らせます。
③絵カードを使って意味を知る
絵カードを並べて見せ、かけ算の意味を理解させた後、九九表で、式のある位置を確認させます。
例:「1箱にりんごが5個入っています。それが4箱あります。全部で20個になります。だから、式は5×4=20です。」
1箱にりんごが何個入っているか(=掛けられる数)、箱はいくつあるか(=掛ける数)、りんごは全部でいくつか(=答え)に注目させます。
同時処理タイプの子は、そもそも九九を音で覚えること自体が難しい場合があります。
同時処理タイプの子に「九九を唱える」ことにこだわって教えても効果的ではありません。
どのような計算式がどこにあるかという空間的な位置関係を手掛かりに九九を覚えさせるのが有効です。
まとめ
認知処理スタイル別「九九」の覚え方
✅「聞くこと」が得意な子・・・継次処理スタイルの覚え方
・九九の言い方を文章化したり、音で聞かせ、音によって覚える
・YouTubeやCDなどを用いるのも効果的
✅「見ること」が得意な子・・・同時処理スタイルの覚え方
・九九の表を見て、空間的な位置関係を確認する。
・計算カードを用いて九九の表を作成する。
なお、お子さんがどちらのタイプかわからない・・・という場合は、チェックする方法をこちらの記事(継次処理・同時処理どっちが得意?チェックテストで認知処理のスタイルを診断。『「継次処理」と「同時処理」学び方の2つのタイプ』より)で紹介していますので、宜しければ参考にしてみてくださいね。
ものごとの”わかり方”(認知の仕方)には、「継次処理」スタイルと「同時処理」スタイルの2つのパターンがあり、どちらが得意かによって、効果的な学習の方法が変わってきます。 通常、多少の強弱はあっても「継次処理」「同時処理」がバランスよく[…]