うちの子が「読み書き」できない7つの原因とは?練習してもできない理由を『LDの子の読み書き支援がわかる本』から学ぶ。

ひらがな・カタカナ・漢字などの文字や文章の「読み書き」が苦手、と一口に言っても、その特徴はさまざま。

「文字の形を見分けるのが苦手」「読み方を覚えるのが難しい」など、読み書きの中でもどんなことを、なぜ苦手としているのかがわかれば、その子にとって必要なサポートや、その子に合った学び方がわかります。

『LDの子の読み書き支援がわかる本』は、学習障害(LD)の子どもたちを支援するための実践的なガイドブック。

読み書きに困難を抱える子どもたちの特性を理解し、効果的な支援方法を提供することを目的としています。

こちらの記事では本書の中から

・LD(学習障害)やディスレクシアの子が「読み書きが苦手」な7つの原因

についてご紹介します。


LDの子の読み書き支援がわかる本 (健康ライブラリー イラスト版)

LDやディスレクシアの子が「読み書きが苦手」な7つの原因

LD(学習障害)やディスレクシア(読み書き障害)の子どもたちは、「読み書き」という一連の作業の中で、どこかに苦手がある状態。

原因は子どもによって違うため、一般的な方法で読み書きを練習してもなかなか上達しない、ということが起こります。

読み書きの困難の原因は以下の7つ。

①音韻意識の弱さ 

文字と音の変換がうまくできない

➁視覚認知のかたより 

文字や単語をすぐには見分けられない

③聴覚認知のかたより 

音の聞き分けや、聞いて記憶することが難しい

④記憶の弱さ 

ワーキングメモリなど記憶の働きが弱い

➄論理的思考力の弱さ 

文章のつながりがよくわからない

⑥語彙の不足 

使いこなせる言葉がなかなか増えない

⑦部品意識の弱さ 

漢字の部首やパーツが覚えられない

これらのどこかに弱さや偏り、不足があると「読み書き」が苦手になってしまいます。

なお上記のうち①~④(①音韻意識の弱さ、➁視覚認知のかたより、③聴覚認知のかたより、④記憶の弱さ)については、認知機能の弱さで変わりにくい部分なので、無理に整えようとせず他の方法で補うのがポイント。

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視覚認知が弱い子には聴覚認知を活かした学び方を教える など

また➄~⑦(➄論理的思考力の弱さ、⑥語彙の不足、⑦部品意識の弱さ)については、どちらかといえばスキル的(行動的)なレベルなので比較的調整しやすく、支援によって伸ばしていける部分。

子どもの得意な方法で学習できれば、スキルを十分に増やしていくことができます。

①文字と音を変換できない・・・【音韻意識の弱さ】

✅読み書きのときに文字が抜けたり多くなってしまう

✅小さい「っ」を大きく書いてしまう(例:でんしゃ⇒でんしや)

✅話はしっかり聞き取れているのに、文字に書き起こすと書き間違いが多い

「音韻意識」とは、言葉を音の単位で認識し、操作する能力のこと。

例:「いるか」→「い・る・か」と分解したり、音の順番を入れ替えて新しい言葉(かるい)を作ったりする力

音韻意識が弱いと、文字と音を変換すること、すなわち音を聞いて文字を思い浮かべたり、逆に文字を見て音をイメージすることができません。

文字を音に変換できない・・・単語や文章を見た時に、それが頭の中で音に変換されず、正しい読み方がわからない。

音を文字に変換できない・・・読み上げられた単語や文章を文字に変換することが苦手。書き起こすのに時間がかかるうえに間違いも多い。

音韻意識を持つためには、単語から読み仮名を音として抽出し、それを1文字ずつに分解するプロセスが必要になります。

例:「電車」→「でんしゃ」→「で」「ん」「しゃ」に分解
音の抽出・分解を遊び感覚で習得するため、おはじきなどの道具を使って音を視覚化すると、音韻意識の弱い子にもわかりやすくなります。

➁文字や単語をすぐに見分けられない・・・【視覚認知のかたより】

視覚認知のかたよりは、「ひらがなの単語をまとまりとして読むことの弱さ」と「形や位置をとらえることの弱さ」の2つに分けることができます。

どちらも視覚が関わっていますが、それぞれ対応方法が異なるため分けて考える必要があります。

まとまりとして認知する力が弱い場合

✅ひらがなの単語をまとまりとして読めず、1文字ずつ読む

✅長い単語を読む途中でつまる

✅文章を1文字ずつ読むため内容が理解できない

目の動きの研究から、人間はひらがなの文章を読むときに、2~4文字ずつをまとまりとして認知していることが明らかになっています。

その力は小学1~3年生で育つものですが、読み書きの苦手な子には、その弱さがみられることがよくあります。

通常は記憶をもとにして、見知っている単語はまとまりとして認知することができるので、単語をカードに書いて見せる等、文字のまとまりを単語として目になじませることが効果的。

単語を流暢に読めるようになることで、文章の音読もスムーズにできるようになります。

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文字数の少ない単語から始めてみましょう。

形や位置をうまくとらえられない場合

✅文字を書くと左右が入れ替わったり、鏡文字になったりする。

✅読書中に1行読み飛ばしたり、読んでいるところがわからなくなったりする。

✅漢字の形を見分けるのが苦手で、「林」と「森」を間違えてしまう。

✅算数の小数点やグラフの線、点の位置を間違えて読んだり書いたりする。

眼球運動や視空間認知などの視覚にかかわる機能は、日常生活において物体の位置や距離を認識し、地図を読んだりスポーツをしたりする際に不可欠なスキル。

これらのどこかに偏りがあると、形や位置をうまくとらえられず見方のミスが多くなってしまいます。

眼球運動の弱さ・・・目を動かす機能が弱く、視点をうまく移動できない。

例:文字を読み取ったり探すのに時間がかかる

視空間認知のかたより・・・物体の形や大きさ、位置などを正常に把握する機能にかたよりがある。

例:人が投げたボールをうまくキャッチできない

視覚認知に偏りがある場合、聴覚がよく働いている子には、文字の形や意味を親子で語り合うなど話し言葉で理解を補うのが効果的。

また視覚認知を改善する方法として、視線を動かしたりなぞり書きをしたりして視覚認知の働きを整える「ビジョントレーニング」がありますので、取り入れてみるのもひとつの手です。

※関連記事:勉強が苦手な原因は「見えにくさ」かも!?”見る力”を鍛えるオススメ教材『1日5分!眼と体を楽しく動かすビジョントレーニング』をご紹介

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③音の聞き分けが苦手・・・【聴覚認知のかたより】

✅言葉を聞いたり読み上げたりして、耳で覚えるのが苦手

✅九九が身につきにくい

✅単語の読み方を間違えて覚えている

文字の読み方などを聞いて覚えるためには、多くの音の中から必要な音を選び、しっかりと聞き取って覚える必要があります。

その過程のどこかにかたよりがあるために、言葉の習得が遅れて読み書きが苦手になっているケースも。

「聞いて区別する」のが苦手・・・人の話を生活音などと区別する、発音されたとおりに聞き取ることが苦手
「聞いて記憶する」のが苦手・・・人の話や自分の発言を覚える「聴覚記憶」が弱い

聴覚認知にかたよりがある場合には、聴覚以外で単語の読み方や文章の内容が理解できるよう、単語カードやイラストなどの視覚的な手がかりを活用すると、スキルが定着しやすくなります。

④ワーキングメモリが弱い・・・【記憶の弱さ】

✅漢字の読み方や書き順などを何度教わっても覚えられない

✅教わってもできないことが続くため、「勉強してもムダ」と意欲を失っている

文字の読み方も書き方も、教えてもらえば理解できるのに数日後には忘れている等、教わったことが知識として定着しにくい場合には、記憶力の弱さが原因として考えられます。

特に漢字の読みの困難には、ワーキングメモリの弱さが関わっています。

ワーキングメモリとは・・・情報を一時的に記憶・処理する能力のこと。よく頭の中の小さな「メモ帳」に例えられます。

ワーキングメモリに一時的に保持された情報が、反復練習や深い理解によって長期記憶に転送され、定着します。

ワーキングメモリが弱いと、読み書きを一度教わっても、その情報やイメージを繰り返し使うことがうまくできないため、教わったことが知識やスキルとしてなかなか定着していきません。

りんこ
特に難しいのが、抽象的な意味の漢字を読むこと。

具体的なイメージがつかみにくい単語を覚える時には、文字とその読み方を機械的に反復することが重要になります。

ワーキングメモリが弱い子は、頭の中で情報を整理したり確認したりすることが苦手なので、単語カードやイラスト、写真、エピソードなどを教材として使い、見直したり聞きなおしたりしやすい環境をつくることで、長期記憶として定着させていきましょう。

➄文章のつながりがよくわからない・・・【論理的思考力の弱さ】

✅会話をしていても話がかみあわないことが多い

✅黙読も音読も流暢に間違えずできるが、文の要点を理解できていない

✅作文を書くことはできるが、話が前後したりして読みにくい

文字を流ちょうに読むことはできるのに、文章の意味が理解できていない場合、論理的思考力の弱さが考えられます。

論理的思考力とは・・・情報を正確に整理し、結論と根拠を明確にして、筋道を立てて結論を導き出す思考能力のこと。

論理的思考力が弱いと、読み取った情報を頭の中で整理したり、分析したりすることがうまくできません。

会話でも同じことが起こり、友達の話を聞いても内容が頭に残らずトラブルになることも。

論理的思考力に弱さがある場合は、論理的な考え方の例として、文章の中から原因と結果を書き出し図式化することで因果関係をわかりやすく示すことを教えます。

原因(出来事を引き起こした原因)⇔ 結果(原因によって引き起こされた出来事)

「原因がある、だからこのような結果になった」

「結果が出た、なぜならこのような原因があったからだ」

・・・という関係性を図式で理解できるようにしていきます。

文章を読む前に、単語カードや写真などで内容を予習させるのもよい方法です。

⑥使いこなせる言葉が少ない・・・【語彙の不足】

✅読み書きや会話で、固有名詞を使わず「あれ」などの指示代名詞を使うことが多い

✅「舌」と書くべきところを「下」と書くなど、文字の意味がよく理解できていない

✅長い文章を読むときに、単語をうまく読めずに止まってしまう

語彙委の不足も、読み書きの困難につながる一つの要素。

語彙の不足は読み書きの困難を引き起こし、それがさらに語彙の定着をさまたげるという悪循環を起こしがちです。

語彙が増えにくい原因として、文字や単語の意味を理解できないため言葉を知識として習得できない場合や、記憶力、論理的思考力が弱い場合のほか、ADHDやASDなど、LD以外の発達障害が関わっている場合も。

ADHDの子は、語彙は十分にあっても落ち着いて読み書きができず、「あれ」「これ」という指示語が増えることがあります。

またASDの子には、言葉をその意味のとおりに捉える特性があるため、慣用句や誇張表現を言葉どおりに受け止めて誤解するなど、意味を読み違えることが。

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それぞれの特性を理解し配慮する必要があります。

通常の読み書きでは語彙が増えにくい場合、本人が生活の中で実感できている言葉を覚えることから始めるのがよい方法。

具体例をあげ、写真やエピソードも活用しながら語彙を増やしていきましょう。

⑦漢字の部首やパーツが覚えられない・・・【部品意識の弱さ】

✅かなや漢字の書き順がなかなか覚えられず自己流で書いている。

✅部首が覚えられず、同じ部首の漢字を考えるのが苦手。

✅かなや漢字を書く時に、「はらい」や「はね」を忘れることが多い

漢字をなかなか覚えられない子の中に、漢字を「へん」や「つくり」などの”部品”に分けて覚えることが苦手な子がいます。

このタイプの子は、かなも漢字もそれなりにわかるため、読み書きが苦手に見えないことがあります。

しかし、文字を正確に習得することが難しく、書き損じが多いなど本人は悩んでいます。

文字を部品に分けること、部首を覚えることが難しい子は「部品意識」が弱く、支援が必要になります。

一見、読み書きができているようで細かなミスが多い場合には、「部品意識」(かなや漢字のパーツを意識すること)を確認してみましょう。

・部品のかたちを覚えられない・・・部品の位置を視覚的に覚えるのが難しい、1画ぶん見落とすなど、結果として字を間違える
・部品の名前を覚えられない・・・「へん」や「つくり」の名前を教わっても、それを聴覚的に覚えるのが難しい、また意味を聞いても身につきにくい

「部品意識の弱さ」には、このように視覚認知や聴覚認知のかたよりが関わっており、一般的な方法ではなかなか覚えられません。

対応策としては、その子が得意な方法で部品を覚えられるように支援すること。

視覚認知が弱い子には、部品を読み上げて覚える方法、聴覚認知が弱い子には、部品を見て覚える方法などが有効です。

まとめ

LD(学習障害)やディスレクシアの子が「読み書きが苦手」な7つの原因

①音韻意識の弱さ

文字と音の変換がうまくできない

➁視覚認知のかたより 

文字や単語をすぐには見分けられない

③聴覚認知のかたより

音の聞き分けや、聞いて記憶することが難しい

④記憶の弱さ

ワーキングメモリなど記憶の働きが弱い

➄論理的思考力の弱さ 

文章のつながりがよくわからない

⑥語彙の不足 

使いこなせる言葉がなかなか増えない

⑦部品意識の弱さ 

漢字の部首やパーツが覚えられない

本書『LDの子の読み書き支援がわかる本』では、今回ご紹介した、LD(学習障害)やディスレクシアの子が「読み書きが苦手」な7つの原因に加え、
・子どもが読み書きを苦手としていることがわかった場合に、専門家に相談し支援を始める具体的な方法
・家庭で手軽にできる、子どもが特に困っているポイントに合った読み書き支援の方法
などについても、わかりやすいイラスト図解つきで紹介されています。
ご興味のある方は、ぜひ一度手に取ってみてくださいね!

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『LDの子の読み書き支援がわかる本』の著者、小池 敏英 先生(尚絅学院大学特任教授、東京学芸大学名誉教授)が監修している、発達が気になる小学生向けの家庭学習支援サービス、『まるぐランド for HOME』があります。
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