『プレジデントファミリー2025年冬号』にて、「入試に役立つ!戦略思考が身につくボードゲーム」が紹介されていました。
本誌でボードゲームを紹介してくれたのは、小学生向けのロジカルシンキング教室、学習塾ロジム代表の苅野進さんです。
学習塾ロジムはディスカッションを重視した授業を採用するなど、入試問題にとどまらず、あらゆる問題の解決力をやしなうことを目的とした塾。
ボードゲームを取り入れた講座も開講されており、実際にボードゲームをする子どもたちを観察している中で、
ボードゲームにより
- 読解力
- ワーキングメモリー
- 戦略的思考力
の3つがやしなわれていることが実感できたとのこと。
こちらの記事では、『プレジデントファミリー2025年冬号のか記事を参考に、
- ボードゲームでやしなわれる、入試に役立つ3つの力
- 戦略思考が身につくおすすめのボードゲーム7つ
についてご紹介します。
プレジデントFamily (ファミリー)2025年冬号 [雑誌]
ボードゲームでやしなわれる「入試に役立つ」3つの力
昨今、入試問題のトレンドは知識の有無を問う暗記型ではなく、問題文の指示を正確に読み取って答えを出す「思考力」型。
学習塾ロジムの苅野さんによると、入試問題の指示を理解して解き方を考える、すなわちルールを理解して戦略を考えるというのは、まさにボードゲームのプレイで必要なこと。
そこで、小学生を対象にボードゲームを取り入れた講座を開講し、実際にボードゲームをする子どもたちを観察している中で、以下の3つの力がやしなわれていると実感できたそうです。
- 読解力
- ワーキングメモリー
- 戦略的思考力
①読解力
問題文の指示をきちんと読めていないのは、ケアレスミスではなく読解力不足と考え、対策が必要。
ところが、間違えた問題を「もう一度しっかり読もう」と言っても、子どもはなかなかやりたがらないのが現実。
その点ゲームなら、楽しいうえに「勝ちたい」という欲求があるため、大人が何も言わなくてもマニュアルを丁寧に読むように。
説明書を読まなくても楽しめるように作られているテレビゲームやスマホと違って、ボードゲームはルールブックをしっかりと読み込み、きちんと理解しないと勝つことができません。
つまりボードゲームを通して、ルールを厳密に読む癖がつくことで、試験の問題文を読み込む読解力が自然とやしなわれていきます。
②ワーキングメモリー
ワーキングメモリーとは脳の前頭前野の機能で、必要な情報を一時的に記憶・処理する能力のこと。
よく、頭の中の小さな「メモ帳」に例えられます。
同時に複数のことを頭に置きながら複雑な認知作業をするためには、ワーキングメモリーが鍛えられていることが必要になります。
ボードゲームでは、ルールに例外があったり、プレイする相手の出方を予測しながら戦略を考え、複数の状況を同時に頭に置きながらゲームをすることが多いため、ゲームをしながら自然とワーキングメモリーを使う力が身につきます。
③戦略的思考力
多くのボードゲームは、運だけで勝敗が決まるものではありません。
勝つためにはゲームのルールを理解した上で、「相手はこう考えて、こう動くはず」など、筋道立てて論理的に考え、最善の一手を見つけ出すことが必要。
繰り返し同じボードゲームで遊ぶうちに、自分や相手の状況を分析して、確率的な計算を自然に行う力が身についていきます。
この戦略的思考力が、試験の大問を最後まで解く際に、問題の構造を理解して法則を推理する力につながります。
戦略思考が身につくおすすめボードゲーム7選
ガイスター
ガイスターでは、6×6マスのボードと、オバケコマ各人8個(赤4個・青4個)を使用します。
メビウスゲームズ マグネットガイスター ボードゲーム|8歳から遊べる2人専用の心理戦ゲームの名作|持ち運びに便利なマグネット仕様
<遊ぶ人数>2人
<遊び方>
・プレイヤー各人が、6×6マスの盤上に、相手に色が見えないよう「良いオバケ(青)」4個と「悪いオバケ(赤)」4個を置きます。
・じゃんけんなどで順番を決め、手番のプレイヤーは自分のオバケ1個を前後または左右に1マス移動させます。
※斜めには移動できません。また、自分のオバケがすでにいるマスには移動できません。
・相手のオバケがいるマスに移動したら、そのオバケをつかまえたことになり、ボードから取り除きます。
・次のうち1つができたら勝ちとなります。
・相手の「良いオバケ(青)」を4個とも捕まえる
・自分の「悪いオバケ(赤)」を4個とも相手に取らせる
・自分の「良いオバケ(青)」を、相手の陣地から脱出させる。
このゲームの面白いところは、コマの色が相手には見えないように配置されるため、相手のコマを取るまでは「良いオバケ」なのか「悪いオバケ」なのかがわからないこと。
これによりプレイヤーは、 相手がどのコマを積極的に動かすか、どのコマを守る傾向があるかを観察する必要があります。
どのコマが「良いオバケ」でどのコマが「悪いオバケ」なのかを相手のコマの動かし方から推理して、戦略的にゲームを進めることで論理的推理力がやしなわれます。
また、コマを取られるのを怖がって守るだけでも、逆に相手のコマを取ろうと攻めるだけでも勝てません。
盤上の複数個所に目を配りながら攻撃と防御を考える必要があり、一部だけではなく盤面全体を俯瞰してゲームを進める視野の広さをやしなうこともできます。
ガイスターでやしなわれる力
・論理的推理力
・全体を俯瞰する力
ラミィキューブ
ラミィキューブでは、数字が書かれたタイル(1~13×4色×2セット)+ジョーカー2枚、計106枚を使用します。
増田屋コーポレーション(Masudaya Corporation) Rummikub CLASSIC ラミィキューブ クラシック
<遊ぶ人数>2~4人
<遊び方>
・シャッフルしたタイルを各人14枚ずつ配ります。
・順番に、手持ちのタイルから『同じ色、数字の連番、3枚以上』、もしくは『違う色、同じ数字、3枚以上』のタイルを出して、場に組み合わせ(役)を作ります。
・1回の手番でいくつでも役を作ってOK。また既に場に出されている役にタイルを付け加えたり、組み替えて新たな役を作ることもできます。
・いちばん早く手札を出し切った人が勝ちとなります。
またラミィキューブが面白いのは、場に出ているタイルを組み替えて自分の手札を出す「アレンジ」の要素があること。
例えば、場に赤色の「4・5・6」という連続した数字の組み合わせがある場合、手持ちに赤の「3」や「7」があれば、それらを既存の組み合わせに追加して「3・4・5・6」や「4・5・6・7」とすることができます。
また、 場に赤色の「4・5・6・7・8」という連続した数字の組み合わせがあり、手持ちに同じ赤色の「6」がある場合、手持ちの「6」を使って、場の「4・5・6・7・8」を「4・5・6」と「6・7・8」に分割することができます。
このように、既存の組み合わせに手持ちのタイルを追加したり、既存のセットを分割・再構築することで新たな組み合わせを作り出し、手持ちのタイルを効果的に場に出すことができます。
ラミィキューブでやしなわれる力
・複数のルールを覚えて運用する力
・柔軟な発想力
・戦略的思考
ブロックス
ブロックスは、1~5個の正方形を組み合わせた21種のブロックを、順番にマス目の描かれた盤面に置いていく陣取りゲーム。
マテルゲーム(Mattel Game) ブロックス(Blokus) ブロックス ボードゲーム 知育ゲーム 2~4人用 7歳から BJV44
<遊ぶ人数>2~4人
<遊び方>
・最初のピースを選んで、ボードの四隅にピースの角が接するよう置きます。
・2手目以降は、自分が置いたピースの角につなげて次のピースを置いていきます。その時、辺と辺が重なってはいけません。
・順番にピースを置いていき、全員が置けなくなった時点で終了。残ったピースのマス数が少ない人が勝ちとなります。
(例:4個のマスのピースと5個のマスのピースが残ったら、合計9マスが残ったと数えます。)
ブロックスでは、盤面全体を見る視野の広さとともに、手持ちのブロックの形や向きを考慮して、空いているマス目のどこに置けばもっとも効果的かをぱっと見極める図形認識力が必要。
また「ここに置いたら次はどうなるか」と先を予測して、限られたボード上の空間をどのように活用するかを把握し、戦略を立てる論理的思考力がやしなわれます。
自分のピースをできるだけ多く配置して陣地を広げるだけでなく、同時に相手の持っているブロックから動きを予測し、相手のブロックが入り込めないよう邪魔する戦略も求められます。
ブロックスでやしなわれる力
・図形認識力
・論理的思考力
・戦略的思考力
neu(ノイ)
neu(ノイ)は、数字や指示の書かれたカードを順番に場に出していき、合計が101を超えた人が負け、というシンプルなルールのカードゲーム。
おもちゃ箱イカロス ノイ(neu) カードゲーム (2-7人用 10分 7才以上向け) ボードゲーム
【エントリーでポイント5倍+店ポイント】ノイ neu カードゲーム ファミリーゲーム 7歳~
<遊ぶ人数>2~7人
<遊び方>
・各人3枚ずつカードを配ります。
・手札から順番に1枚ずつ場に出し、出したカードの数を合計していきます。
・合計が101を超えた人が負けとなり、そのラウンドから脱落。
・残った人で再びゲームを続け、最後まで残った1人が勝者となります。
※カードは、0、+1~10、+50の足し算カード・-1、-10の引き算のカードの他、「スキップ」カード(次のプレイヤーの番を飛ばす)や「リバース」カード(順番を逆にする)などの特別カードも。
neu(ノイ)は、カードの数字をひたすら足していくという単純なゲームですが、ゲームの勝ち負けがかかると、子どもたちは計算ドリルをする時よりもはるかに真剣に、集中して計算を行います。
また合計の数が101に近づいてくると、プレイヤーの人数と残りの数を見比べて「自分まで回ってくるか」「いくつを出せば相手が困るか」を考えることに。
自分の手札と場の状況を考慮し、特別カードを含め、最適なカードを選択することで、戦略的な思考や判断力がやしなわれます。
当然ですが、計算はすべて暗算。しかも現在の合計を常に覚えておかないといけないため、自然とワーキングメモリも鍛えられます。
neu(ノイ)でやしなわれる力
・1ケタ・2ケタの暗算能力
・戦略的思考力
・ワーキングメモリ
カタカナーシ
カタカナーシは、お題カードに示されたカタカナ言葉を、カタカナを一切使わずに説明してお題を当ててもらうゲーム。
幻冬舎(Gentosha) カタカナーシ ボブジテン 8人用 8才以上
<遊ぶ人数>3~8人
<遊び方>
・山札からお題カードを1枚引き、出題者のみが確認します。
・出題者は、お題のカタカナ言葉を、カタカナを一切使わずに説明します。(例:お題が「ハンバーガー」の場合→パンではさんだ肉料理 など)
・他のプレイヤーは、出題者の説明を聞いて推測し、早い者勝ちで解答します。(各プレイヤーの回答権は1回のみ)
・正解が出た場合、出題者と正解者はそれぞれ1点(お題カード1枚)を獲得します。
・正解者が次の出題者となり、ゲームを続けます。
・いずれかのプレイヤーが先に10点を獲得した時点でゲーム終了となり、そのプレイヤーが勝者です。
カタカナーシでは、ゲームをとおして、知らない言葉や複数の意味を持つ言葉に数多く触れることで語彙力を伸ばします。
また、ある言葉を違う表現で言い換える過程で、物事の特徴や本質を分析し、論理的に整理する力や、「他人が理解できる表現」を考える習慣、自分の考えを明確に伝える表現力がやしなわれます。
イベントカードでは、言葉を使わずジェスチャーで伝えるなどさまざまな情報伝達の手段を使うことで、コミュニケーション能力が高まる効果も。
※イベントカード:ゲームを盛り上げるための特別なカード
・単語だけで:文章ではなく、単語のみで説明する
・ラップ風に:ラッパーになりきってリズミカルに説明する
・声を出さずに:ジェスチャーや口の動きだけで説明する
・濁音・半濁音なしで:濁音(゛)や半濁音(゜)を使わずに説明する
カタカナーシでやしなわれる能力
・語彙力、表現力
・コミュニケーション能力
・論理的思考力
ピクテル
ピクテルは、ピクトグラムが描かれた透明なカードを組み合わせてお題を表現し、他のプレイヤーがそのお題を当てるコミュニケーションゲーム。
※ピクトグラムとは、絵や図で情報を伝える記号で、文字を使わずに視覚的に情報を伝達するデザインのこと。
アークライト ピクテル (3-6人用 15-30分 6才以上向け) ボードゲーム
<遊ぶ人数>3~6人
<遊び方>
・プレイヤーは出題者、作成者、回答者に分かれます。
・12面サイコロを振り、出た目に応じてするカテゴリーを決定します。
*カテゴリー*
①スポーツ
➁漫画、アニメ、ゲーム
③イベント
④人物、キャラクター
➄映画、本
⑥職業
⑦楽しいこと、楽しかったこと
⑧うれしいこと、うれしかったこと
⑧悲しいこと、悲しかったこと
⑩怖いこと、怖かったこと
⑪驚くこと、驚いたこと
⑫自由テーマ
・決まったカテゴリーに沿った具体的なお題を出題者が考え、ホワイトボード(箱の裏)に記入します。(例:テーマ「イベント」→お題「運動会」)
・作成者は、60枚の透明なピクトグラムカードを自由に組み合わせて、お題を視覚的に表現します。 カードは重ねたり並べたりすることもできます。
・他のプレイヤーは、作成者が作ったしたピクトグラムを見て、お題が何かを推測し回答します。※回答は何回でもOK
・正解したら、出題者・作成者・正解者にそれぞれ1点(得点チップ)が与えられます。
・次の出題者を時計回りで交代し、同様の手順を繰り返します。
・プレイ人数に応じて、あらかじめ設定した得点に最初に到達したプレイヤーが勝者となります。
ピクテルでは、お題の内容を言葉ではなくピクトグラム(絵)であらわす必要があるため、辞書的な知識だけでなく、イメージをともなって言葉を理解することができるように。
また、用意されているピクトグラムはシンプルゆえ、同じ1つの絵でも、よろこんでいる人に見えたり、困っている人にも見えたり。
複数のピクトグラムの組み合わせ次第でさまざまな意味を持たせることができるため、発想次第でいかようにも使うことが可能。
なお「なるべく少ない絵で表現する」というのは抽象化の第一歩。
言葉の意味を表現するだけでなく、算数の文章題を図式化する力へもつながっていきます。
ピクテルでやしなわれる力
・イメージをともなった語彙力
・文章を図式化する力
・クリエイティブな思考の柔軟性
家庭でボードゲームをやるときの注意点
家庭でボードゲームをやるときの注意点として苅野さんがあげているのが、「子どもが楽しめるようハードルを下げて行う」こと。
子ども相手に親が手を抜かず本気を出して連勝してしまい、子どもがイヤになってしまうということはありがち。
また「指導する」意識が強くなり、子どものミスを逐一指導してしまうのもNG。
子どもにとって楽しい遊びの時間ではなく、「つまらない授業の時間」になってしまいます。
最初は手の内を見せながらやってみる、また、親があえて間違えてみせ、子どもに指摘させるよう仕向けたり、「ここはどうするんだっけ?」など、子どもに教えてもらうのもおすすめの方法。
特に低学年など小さいうちは負けると悔しくて泣いてしまったり、イヤになってしまうもの。
その場合はゲームの勝ち負けにかかわらず「ベストプレイ賞」として、「この局面が良かったよ」と、いいプレイを評価してご褒美をあげる方法をおすすめしています。
まとめ
ボードゲームでやしなわれる、入試に役立つ3つの力
- 読解力
- ワーキングメモリー
- 戦略的思考力
これ以外にも、ボードゲームには、勉強と違って「間違えても怒られない」というメリットも。
間違えたら自分がゲームで負けるだけで、誰からも責められない。
だから、負けても「もう1回やろう」という気持ちになることで、結果的に子どもたちのトライ&エラーの回数が大きく増加します。
間違いや失敗を恐れる子は、確実に成功すると自信があること以外には手を出さなくなりがち。
でも、それでは今以上に成長することができなくなってしまいます。
ボードゲームのように「間違ってもいいんだ」という心理的安全性を感じる場でトライ&エラーを繰り返すことで、子どもたちの戦略的思考力がやしなわれるだけでなく、精神的な強さも身につきます。
また、ボードゲームでは必然的に、対戦相手とのやりとりが生まれます
ゲームで負けを認めたり駆け引きをする中で、他人と上手くやっていくコミュニケーション能力もやしなわれていきます。
楽しく試行錯誤しながら思考力やコミュニケーション能力が鍛えられ、いいことづくめのボードゲームをぜひご家庭でも取り入れてみてはいかがでしょうか。