『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』は、ことばの教室(言語障害通級指導教室)の現場で実際に使用された、「読み書き」学習の基礎となる11の能力を伸ばすための教材が収録されている本。
学習場面でそのまま使える教材409枚が収録されたCD-ROMが付属しているので、「読み書き」につまずいているお子さんの学習支援にすぐに役立てることができます。
CD-ROM付き 特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集 (発達障害を考える 心をつなぐ)
「読む」「書く」ためには「聞く」「話す」力が十分に育っていることが前提。
本書では、クロスワードパズルなどの問題をとおして短い文を「読む」ほか、絵を見て考えたことを「話す」、また他人の意見を「聞く」ことにより、結果的に『読み書き』の能力を伸ばせる取り組みが多く含まれています。
今回の記事では、本書に掲載されている国語教材のうち、④文章の読解 ⑤物事の説明 の能力を伸ばす教材と指導方法についてご紹介していきます。
なお、『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』で紹介されている
- 「読み書き」の課題の背景にはどんな原因があるのか?
- 「読み書き」の支援にあたって気を付けることは?
- 「読み書き」学習の基礎となる11の能力とは?
については、別の記事でご紹介しています。>>>関連記事:「国語が苦手」な原因と、読み書き学習の基礎となる11の能力とは。『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』より
『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』は、ことばの教室(言語障害通級指導教室)の現場で実際に使用された、「読む・書く・聞く・話す」などの能力を伸ばすための教材が収録されている本。 具体的には、 […]
CD-ROM付き 特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集 (発達障害を考える 心をつなぐ)
「読み書き」の学習で身につけたい11の能力
本書に収録されている教材は、学習の基礎となる11の能力を身に着けることを目的としています。
「読み書き」学習の基礎となる11の能力
①音韻操作(音韻認識)
②語彙
③促音
④文章の読解
⑤物事の説明
⑥時間関係
⑦適切な言動
⑧感情表現・理解
⑨漢字の読み
⑩漢字の書き
⑪作文
今回の記事では、④文章の読解 ⑤物事の説明 についてお伝えしていきます。
④『文章読解』の教材と指導方法
音読・黙読した文字は、頭の中で音に変換することで読むことができます。
この「文字を音にする」作業につまずきがあると、読むことだけで精一杯になってしまい、内容までを読み取ることができません。
本書では、短い問題文やクロスワードパズルに取り組むことで、問われていることを読み取る力をつけていきます。
スリーヒントクイズ
取り組みのねらい
複数の情報から、尋ねられている内容を理解したり、その情報が示すものを思い起こしたりできるようにする。
3つの短文をヒントに、その文章が示しているものが何かを考えます。
<取り組み方>
1.3つの短文を読ませる。※読むことにつまずきがある場合は読んで聞かせてあげてもよい
2.短文の内容が示しているものを選択肢から選び、〇で囲んだり名前を答える。
例:
・てに はめるものです。
・かわで できています。
・とんできた ボールを とります。
(答え:グローブ)
ヒントとなる短文を読むことで、文の意味を理解する読解の力をやしなうとともに、複数の情報から1つのものを推測する集中的思考の取り組みです。
子どもに問題を考えてもらう場合は、 あるものに関してさまざまな属性を言うことから、ひとつの観点に固執せず、いろいろな角度(形・色・触感・味、種類、機能など)からものを見るトレーニングになります。
クロスワードパズル
取り組みのねらい
たずねられている内容を理解して、そこから思い起こされるものを考えたり、書いたりできるようにする
短文や絵をヒントにして、クロスワードパズルを完成させます。
<取り組み方>
1.縦と横それぞれの問題を読んで、マス目に入ることばを考える。
2.考えたことばをマス目に書き、クロスワードパズルを完成させる。
一つの問題につまずき、それにこだわって学習が進まなくなってしまう場合は、切り替えて次の問題に取り組むよう促しましょう。
また答えは、ひらがな・カタカナどちらで書いても良いですが、混同することでつまずく場合は、はじめからすべてひらがなで書かせるようにしましょう。
ひらがな・カタカナが定着していない場合は五十音表を活用しましょう。
なぞなぞあいうえお
取り組みのねらい
同じ文字を「繰り返し確認しながら、ひらがな・カタカナやものの名前を覚える。
答えのはじめの文字がすべて同じになる問題を解き、答えをひらがな・カタカナで書きます。
<取り組み方>
1.はじめに、問題の答えは最初の文字が同じになることを伝える。
2.問題を読み、最初の文字をヒントにしながら答えをマス目に書く。
例:
①そらから おちてくる みずは なあに?
あ□ (答え:あめ)➁じめんに とんねるを ほる ちいさな むしは なあに?
あ□ (答え:あり)
答えがわからなくてもすぐに教えてしまうのではなく、さまざまなヒントを与えてあげましょう。
書くことに困難がある場合は答えを言わせるだけでもOKです。
➄『物事の説明』の教材と指導方法
周囲とコミュニケーションをとるためには、物事を相手に適切に伝えることが必要。
しかし読み書きにつまずく子は、物事を正しく把握したり、それを言葉で説明したりすることがむずかしい傾向があります。
学習をとおして、ものの特徴や属性、共通点や相違点を考え、知識として増やしていくことが必要になります。
りゆうをかんがえよう
取り組みのねらい
周囲とのコミュニケーションを豊かにするために、身近な物事について理解し、それをことばで説明できるようにする。
身近な生活習慣について、なぜそれを行う必要があるのかを話し合ったり書いたりします。
<取り組み方>
1.身近な生活についての質問を読み、それを行う理由を考える。
2.考えた理由を指導者と一緒に話し合い、解答欄に書く。
※書くことにつまずく子どもの場合は、単語や箇条書きで書ければよいことにしたり、指導者がかわりに書いたりしてもOK。
例:
・ごはんをたべるのはどうしてかな?
・いつもポケットにハンカチをもっているのはどうしてかな?
子どもの意見が質問内容にあてはまらなかったとしても否定せず、考えたこと自体の努力を認めてあげましょう。
その上で、「先生の意見」として解釈の例を伝えるようにしましょう。
「読み書き」ができるようになるためには、「聞く」「話す」力が十分に育っていることが前提になります。
けろちゃんは なにをしているの?
取り組みのねらい
主語、目的語、述語などを使って文章を書いたり、物事を説明したりできるようにする。
絵の「けろちゃん」が何をしているのかを考え、それを文章に書いたり、ことばで説明したりします。
<取り組み方>
1.絵を見て、その場面がどのようなようすをあらわしているかを考える。
2.考えたようすを「〇〇は〇〇を(〇〇に)〇〇している」などの文型にして、話したり解答欄に書いたりする。
※書くことにつまずく子どもの場合は、考えたようすを話すだけでもOK
【主語】 【目的語】 【述語】答えの例:けろちゃんは 本を 読んでいる。
普段から、「主語+述語」で話すことを意識するのも重要です。
ようすをかんがえよう
取り組みのねらい
場の状況を適切にとらえて、ようすや人の気持ちに気づいたり、それをことばで説明したりできるようにする。
絵を見て場面のようすを考えたり、自分に置きかえて考えたりしながら質問に答えます。
<取り組み方>
1.絵を見て、その場面がどのようなようすをあらわしているかを考える。
2.考えたようすを話し合いながら、それぞれの質問に答える。
教材では、日常でよく見られるさまざまな場面の絵が提示されています。
場面のようすを説明したり、人物の気持ちや、その場面で取るべき態度について話すことで、ことばで説明する力とともに、社会性もやしなうのが目的の取り組みです。
指導者も自分の考えを話すことで、同じ状況でもいくつかの解釈や対応のしかたがあることに気づかせます。
子どもの読み取りが絵の状況や質問の内容にあてはまらなくても否定せず、考えたこと自体の努力を認めた上で「先生の意見」として解釈の例を伝えましょう。
なかまにわけよう
取り組みのねらい
ものの特徴や属性を理解して、なかまに分けたり、分けた理由を説明したりできるようにする。
選択肢の絵から、問題の内容にあてはまると思うものを選んで、なかまに分けます。
<取り組み方>
1.選択肢の絵を見て、それぞれの名前を言う。
2.問題を読み、その特徴や属性にあてはまると思うものを選択肢から選び、解答欄に書く。
一つものもにもいくつかの特徴があり、複数の項目にあてはまる場合があります。
つながることばをかいてみよう
取り組みのねらい
ものの特徴や属性を理解して、そのものについて説明したり、修飾することばを思い起こしたりできるようにする。
中央の絵を見て、そこから連想されることばを考えて書きます。
<取り組み方>
1.はじめに中央の絵を見て名前を言う。
2.絵から連想されることばを解答欄に書く。
例:
・救急車→くるまのなかま、はしる、あかとしろ 等
・はさみ→切る、持つ、文房具、かたい 等
思いついたことばを自由に書いていきます。
1つのものを色々な角度(形・色・触感・味、種類、機能など)から見ることで思考の柔軟性をやしなうとともに、ようすを表す言葉を獲得し表現力につなげる取り組み。
なかなかことばを思い起こせない場合は、「何のなかまかな?」「どんな色かな?」など、子どもが言葉を思い起こしやすくなるような声掛けをしましょう。
おなじところ ちがうところ
取り組みのねらい
ものの名前をおぼえながら、特徴や属性、ほかのものとの共通点や相違点を理解して、適切に説明できるようにする。
共通する部分のある二つのものの絵を見ながら、それぞれの共通点と相違点を考えて書きます。
<取り組み方>
1.2つのものが描かれた絵を見て、それぞれの名前を書く。
2.それぞれの絵の、共通するところと違っているところを考えて話し合う。
3.話し合った内容を解答欄に書く。
※書くことにつまずきがある子どもの場合は、名前や特徴を言うだけでよいことにしてもOK
例:「かさ」と「かっぱ」
おなじところ:雨の日に使う
ちがうところ:持って使うものと 着て使うもの
文例を示しておき、話しながら確認できるようにしてもOK。
どんなものかな?
取り組みのねらい
周囲と適切にコミュニケーションをとるために、ものの特徴や属性に気づき、それをことばで説明できるようにする。
絵を見ながら、特徴についての質問に答えたり、話し合ったりします。
<取り組み方>
1.絵を見て名前を言う。
2.絵についての質問を読み、それぞれに答える。
3.答えたことや知っていることなどについて話し合う。
例:絵の名前<にわとり>
・何のなかまですか?
・子どもは何色ですか?
・どこにいますか?
・どんな声で鳴きますか?
むすんでみよう
取り組みのねらい
複数の情報からものを思い起こしたり、その名前を書いたりできるようにする。
複数の単語をヒントにして、それらが示しているものを考えます。
<取り組み方>
1.それぞれの絵の下に名前を書く。
2.左側の単語を読み、それらが何を示しているのかを考える。
3.単語が示す内容と合う絵を線で結ぶ。
例:
そら・とぶ・のる・はやい・プロペラ・・・ヘリコプター
しろい・ふゆ・つめたい・つもる・だるま・・・ゆき
まとめ
「読む」「書く」ためには「聞く」「話す」力が十分に育っていることが前提。
今回ご紹介した取り組みは、文章を「読む」ことと同時に、考えたことを「話す」、また他人の意見を「聞く」ことが大事なポイントになっています。
お子さんが「読み書き」につまずいているようであれば、「聞く」「話す」力も、取り組みをとおしてしっかり身につけていきましょう。
なお、『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』で紹介されている
- 「読み書き」の課題の背景にはどんな原因があるのか?
- 「読み書き」の支援にあたって気を付けることは?
- 「読み書き」学習の基礎となる11の能力とは?
については、別の記事でご紹介していますので、こちらもご参照ください。>>>関連記事:「国語が苦手」な原因と、読み書き学習の基礎となる11の能力とは。『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』より
『特別支援教育をサポートする 読み書きにつまずく子への国語教材集』は、ことばの教室(言語障害通級指導教室)の現場で実際に使用された、「読む・書く・聞く・話す」などの能力を伸ばすための教材が収録されている本。 具体的には、 […]